ノンパラメトリック法(読み)ノンパラメトリックほう(英語表記)nonparametric method

改訂新版 世界大百科事典 「ノンパラメトリック法」の意味・わかりやすい解説

ノンパラメトリック法 (ノンパラメトリックほう)
nonparametric method

特定確率分布を想定しないで行う統計的推論。たとえば,母集団の平均μがある値μ0に等しいという帰無仮説H0:μ=μ0検定するのに,ふつうは正規分布仮定して棄却域を構成する。その検定は正規分布であるとの仮定が真であるときは最適なものとなる。他方,正規性が成り立たないときにはある程度の頑健性は確かめられているものの,乖離が大きいときには当然よい検定とは成り得ない。そこで母集団分布を特定しないノンパラメトリックな検定方式が考えられている。ノンパラメトリック検定の例は符号検定,並べ替え検定,順位和検定など数多く挙げることができる。たとえば,統計的検定の項のデータ,9.1,8.1,9.1,9.0,7.8,9.4,8.2,9.1,8.2,9.3に基づいて母集団の中央値が8.5であるという帰無仮説を検定する符号検定の考え方は次のようである。中央値が8.5とすると各標本から8.5を引いたものは±の符号を確率1/2でとる。したがって観測したデータで+の符号が極端に多いかあるいは少ないときにH0を棄却するという検定方式が考えられる。棄却域はn=10,p=1/2の二項分布に基づいて構成できる。この例では+が6(-が4)であって有意差は示されない。二つの母集団の統計的大小を検定するためのウィルコクソンF.Wilcoxonの順位和検定はとくに有名で,薬効検定分野で多用されている。これは二つの母集団からの標本全体を,その大きさに従って順位に置き替え,一方の得た順位和の大きさによって検定する方法である。一方,ノンパラメトリック検定の統計量最小にするような母数の値を推定量とする推定方式が考えられ,ノンパラメトリック推定と呼ぶ。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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