出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
オランダの画家。肖像画に動感と瞬間性を導入して新局面をひらき,また市民の集団肖像画を記念撮影的な平板な単調さから脱却せしめ,これを高い芸術的水準を備えたオランダ独自の画種として確立させた。大胆な躍動的な筆触で対象を生き生きと写しとるきわめて斬新な画風は,マネを筆頭とする19世紀後半のフランスの画家たちに大きな影響を与えた。
アントウェルペン(アントワープ)に生まれ,北部に亡命した両親とともに幼時にハールレムに移住。C.ファン・マンデルに師事したと伝えられる。1610年ハールレムの画家組合に入会,以後高齢で没するまで同市で活動を続けた。初期には屋外の宴会を扱った多人数構成の風俗画を描いた形跡があるが,この分野は最初の弟子でもあるディルクDirck Hals(1591-1656)によって継承される。自己を確立してからのハルスは肖像画に専念し,その数は現存作品約240点の8割に達する。16世紀北方肖像画様式から出発したハルスがまぎれもない独自の個性を示した最初の作例は,1616年の大作《ハールレム市聖ヨーリス(ゲオルギウス)警備隊士官たちの宴会》(ハールレム,フランス・ハルス美術館)で,これは成員各人の相貌の正確な描出と画面全体の芸術的まとまりという両立の困難な集団肖像画特有の課題を,瞬間性の導入とそれに伴う人物相互の呼応する視線や身振りの描写によって解決した画期的な作品で,警備隊を扱った彼の他の5点やレンブラントの《夜警》はみなこの成果の延長上に位置している。単身像の肖像画においてもハルスは,モデルに超時間的な硬直したまなざしの代りに,観者に直接語りかけるような親密なまなざしとくつろいだ身振りを与えるとともに,瑣末な細部描写を省略したすばやい大胆な筆触で〈見えるがまま〉の外観を活写して革命的な新風を吹き込んだ。
作品の2割を占める風俗画の大半は1630年代前半までに制作されているが,これらも通常の風俗画と異なって舞台設定を欠き,観者に対峙する陽気で放埒な単独の人物を無地の背景の前に配したもので,肖像画的性格が強い。1630年代以降人々の服装の質素化に伴って彼の絵も色彩の抑制された厳粛な気分のものが多くなる。40年代に優雅で貴族的なファン・デイク風の肖像画様式が流行し始めてからハルスの人気は徐々に衰退し,晩年は貧困のうちにあったが,制作活動は跡絶えず,死の2年前にはハールレム市養老院の男女の理事たちを扱った2点の集団肖像画を描き,峻厳な雰囲気のうちに若いころの作品には見られぬ深い内面性を描出している。弟ディルクのほかファン・オスターデA.van Ostade,ブラウエル,レイステルJ.Leyster,ワウエルマンP.Wouwermanなど多くの弟子をもったが,死後は忘却され,ようやく60年代になってフランスで再評価がなされた。なお彼の手になる素描および版画は1点も現存していない。生年は1581年から85年の間とされる。
執筆者:高橋 達史
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…ケルト美術は,ヨーロッパの第二鉄器時代に当たるラ・テーヌ期(前5~後1世紀)の美術を指し(ラ・テーヌ文化),地域によっては(アイルランド,グレート・ブリテン島など),その伝統がさらに8世紀あまり続いた。従来はケルト美術を中部ヨーロッパの第一鉄器文化(いわゆるハルシュタット文化,前12世紀~前6世紀)にまでさかのぼらせていたが,近年はハルシュタット美術とラ・テーヌ美術はごく限定された影響関係(技法,動物主題,陶器などについて)をもつにすぎないとされるようになった。ケルト文化は前500年ころから今日の南ドイツおよび東フランスを中心にして東西に広がり,西はアイルランド,イベリア半島,東はドナウ川流域からバルカン半島,小アジアに及ぶ。…
※「ハルス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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