パリテ法(読み)パリテホウ

デジタル大辞泉 「パリテ法」の意味・読み・例文・類語

パリテ‐ほう〔‐ハフ〕【パリテ法】

パリテ(parité)はフランス語で同等の意》選挙の候補者を男女同数とすることを定めたフランスの法律の通称。2000年6月制定。
[補説]小選挙区制をとる下院国民議会)議員選挙では、政党・政治団体の候補者を男女同数とすることとされ、男女差が2パーセントを超えると政党助成金が減額される。比例代表制をとる上院元老院)議員選挙では、候補者名簿の登載順を男女交互とすることとされ、違反した名簿は受理されない。こうした規定地方議会にも適用される。

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知恵蔵 「パリテ法」の解説

パリテ法

男女平等(同数)の政治参画を規定しているフランスの法律。選挙の候補者を男女同数にすること、候補者名簿を男女交互に記載することなどを政党に義務付けている。2000年6月制定。パリテは、フランス語で「均等・同数」という意味。女性に一定の議員・閣僚の枠を割り当てるクオータ制が社会的マイノリティーの権利擁護を目的にしているのに対し、男女の性差を普遍的な差異と位置付けるパリテは更に踏み込み、社会のあらゆる意思決定の場に男女が平等にかかわることを目的にしている。
欧州では1970年代以降、ノルウェー筆頭にクオータ制の導入が進められたが、フランスでは憲法院(憲法裁判所)が「性差による区別違憲」と判示したため、導入を可能にする法制化は不首尾に終わった。これにより、男女平等の政治参画を求める機運が高まり、99年に左派ジョスパン首相の提案、右派シラク大統領の発議のもとで憲法を改正。「議員職・公職への男女の平等なアクセスを法律で促進させる」という旨の条項(パリテ条項)を憲法に付け加え、翌2000年に罰則規定を含む法制化を実現させた。
小選挙区制の国民議会(下院)の選挙では、各政党の候補者を男女同数にすることが義務付けられ、立候補者の男女差が2%以上あった場合、政党助成金を減額するという罰則規定が設けられた。比例代表制の元老院(上院)の選挙では、候補者名簿を男女交互に記載することが義務付けられ、これに反した名簿は不受理となった。
しかし、02年に行われたパリテ法の下における最初の国民議会の総選挙では、罰金納付を選択する政党が大半で、女性候補者の数は伸びず、女性議員の割合も10.9%から12.3%へと微増にとどまった。その後、政治家・有権者の間にパリテの思想が浸透していったこと、段階的に厳罰化が進められたことなどで、女性候補者・女性議員の数とも徐々に増加。17年の国民議会の総選挙では、主要政党の女性候補者の割合は40~50%、女性議員の比率もほぼ40%まで上昇した。なお、地域圏議会議員選挙、県議会議員選挙、欧州議会議員選挙などでも、各制度に準じた同様のパリテ規定が適用されている。また、08年に再び憲法が改正され、議員職・公職だけでなく、「職業的・社会的な責任ある地位」もパリテの対象になっている。

(大迫秀樹 フリー編集者/2019年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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