イギリスの社会学者,政治学者パーキンソンCyril Northcote Parkinson(1909-93)が唱える社会生態学的法則。狭義には,彼が1957年にロンドン《エコノミスト》誌に発表した論文で述べた〈公務員の数は,なすべき仕事の量あるいは有無に関係なく一定の割合(5~7%)で増加する〉という法則(第1法則)をいう。この法則が成立する要因として次の二つの習慣が指摘されている。(1)役人はつねに自分の部下を増やすことを望むが,自分の競争相手をもつことは望まない。(2)役人は相互の利益のために仕事をつくり出す。このことがまた公務員のピラミッド組織の肥大化をもたらす。パーキンソンは,この法則をイギリス海軍や植民地省の調査研究から発見した。
また広義には,彼の著書《パーキンソンの法則》(1958)の中に述べる種々の法則を総称して呼ぶことがある。たとえば,(1)会議の決議においては中間派の票が最終的に重要であり,しかもそれは会場の議席の配置によっても大きな影響を受ける(中間派の理論)。(2)財政の一項目の審議に要する時間は,その項目の支出額に反比例する(凡俗の法則)。(3)委員会の理想的な定数は5人で十分であるにもかかわらず増加する。その数が20~22(非能率係数)を超すと委員会はうまく機能しなくなる。(4)ある組織のりっぱな建造物の建設計画は,その組織の崩壊点に達成され,その完成は組織の終息や死を意味する。
さらにパーキンソンは,《かねは入っただけ出る》(1960)の中で,徴税と財政支出に関して,第2法則〈かねは入っただけ出る〉を,また《パーキンソンの成功法則》(1962)の中では,官庁や民間の業務部門に関して,〈拡大は複雑を意味し,複雑は腐敗を意味する〉という第3法則を述べ,現代社会における行政組織や企業の中の諸現象を鋭くとらえている。日本でもパーキンソンの法則は流行語になるほど広まった。
パーキンソンは,ヨーク,ケンブリッジ,ロンドンの各大学で修学後,イギリス,シンガポール,アメリカの各大学で教鞭をとり,アムステルダムにパーキンソン研究所を設立した。経営コンサルタントでもある。
執筆者:二宮 豊志
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イギリスの歴史学者・経営研究者パーキンソンCyril Northeote Parkinson(1909―93)が1957年に公刊した同名の書物によって有名になった、行財政の組織と運営における非合理な慣行の総称。その第一「法則」は、公務員の数は、なすべき仕事の軽重とか仕事の有無に関係なく、上級公務員が出世するために部下の数を増やす必要があることから、一定の割合で増加するというもので、それを数式で表現している。第二「法則」は、国の財政では、個人の家計と異なり、まず支出を決定してから収入を定める悪慣行があるため、課税は無限にあがるというもの。彼はこれを「かねは入っただけ出る」と表現している。そのほかにも、委員会の定員は5人に限ることが必要で、20人以上になれば運営不能である、とか、公務員はお互いのために仕事をつくり合う、などの、数多くの「法則」が説かれ、皮肉たっぷりな表現で官僚機構の弊害が指摘されている。
[田口富久治]
『森永晴彦訳『パーキンソンの法則』(1965・至誠堂)』▽『福島正光訳『パーキンソンの第二法則』(1965・至誠堂)』▽『上野一郎訳『パーキンソンの法則(新編)』(1981・ダイヤモンド社)』
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