フアン・マヌエル(読み)ふあんまぬえる(英語表記)Don Juan Manuel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フアン・マヌエル」の意味・わかりやすい解説

フアン・マヌエル
ふあんまぬえる
Don Juan Manuel
(1282―1348)

スペイン寓話(ぐうわ)作家。アルフォンソ10世賢王の甥(おい)として、トレド県のエスカローナで5月5日に生まれ、1348年6月13日コルドバで没。スペイン文学史上、初めて芸術創造者として文学者の存在を意識し、自分なりの文体を確立しようとした作家。それは代表作の、50編からなる短編説話物語集『ルカノール伯爵』にとくに顕著である。これは、イスラム系の箴言(しんげん)集や物語集、ラテン語による物語集、スペインの年代記、さらには自分が深くかかわった修道会ドミニコ会の説教集をおもに駆使し、彼なりの文学的展開を示したものである。その他の主要著作に『身分の書』があり、中世スペインの社会を知るうえの必読書である。

[清水憲男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フアン・マヌエル」の意味・わかりやすい解説

フアン・マヌエル
Juan Manuel, Don

[生]1282.5.5. トレド,エスカロナ
[没]1348頃.コルドバ
スペインの政治家,作家。フェルナンド聖王の孫,アルフォンソ賢王の甥で,賢王に育てられた。政治家,軍人としての多忙な生活のなかで,寓話集『パトロニオの書,もしくはルカノール伯爵』 El libro de Patronio o el Conde Lucanor (1335?) をはじめ,『騎士従士の書』 Libro del Caballero et del Escudero (26) ,『国家論』 Libro de los estados (30) などを著わした。

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