2-phenylchromone.C15H10O2(222.23).サクラソウ科Primula pulverulentaの葉裏や果実上に,白粉状で存在する.2′-アセトキシカルコンジブロミドにアルカリを作用させるか,フラバノンを臭素化したのち,アルカリで処理すると得られる.無色の針状晶.融点97 ℃.λmax 250,297 nm(log ε 4.06,4.20).水に不溶,ほとんどの有機溶媒に可溶.濃硫酸溶液は紫色の蛍光を発する.なお,3位にヒドロキシ基をもつフラボン誘導体を,とくにフラボノールC15H10O3と称する.フラボンおよびフラボノールのオキシあるいはメトキシ誘導体はフラボン類(フラボノイド中の一群)と総称され,黄色~橙色の色素として遊離,あるいは配糖体として高等植物に広く存在する.代表的なものとして,フラボンではクリシン,プリメチン,アピゲニン,ルテオリンなど,フラボノールではケンペロール,フィセチン,クエルセチン,ミリセチンなどがあげられる.[CAS 525-82-6]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
2-フェニルクロモンともいう。各種の下等・高等植物に広く分布する環状の有機化合物で,サクラソウ科植物プリムラなどの葉の裏や果実の表面の白い粉末もこの化合物を含む。融点99~100℃の無色針状結晶。水にほとんど溶けず,濃硫酸溶液は蛍光を発する。アルコール,ベンゼンには易溶。狭義には置換基のないフラボンそのものを指すが,広義ではフラボンの骨格に水酸(ヒドロキシル)基やメトキシル基が結合した化合物をフラボン類に含める。水酸基が5位と7位に存在するものをアピゲニン,さらに3′位にも存在するものをルテオリンと呼ぶ。水酸基の数が増すと黄色が深くなる。無色のものから橙色のものまで知られている。植物から得られるものの大部分が配糖体であるが,フラボンは他のフラボノイドと違ってC-グルコシドとなることが多い。フラボンの3位に水酸基をもつ化合物をフラボノールと呼ぶが,この水酸基もたいていの場合,配糖体となっている。ケンフェロール,ケルセチン,ミリセチン,アントシアニジンなどがよく知られた代表的化合物である。またフラボンはアセトンとベンズアルデヒドからも合成される。
執筆者:徳重 正信+竹内 敬人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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