日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
フランクリン(Rosalind E. Franklin)
ふらんくりん
Rosalind E. Franklin
(1920―1958)
イギリスのX線結晶学者。ケンブリッジ大学で学び、パリでの研究ののち、キングズ・カレッジのウィルキンズのもとで、DNA(デオキシリボ核酸)のX線結晶学的研究に取り組んだ。DNAの繊維は水分含量により結晶型(A)と濡(ぬ)れた型(B)の2種類のX線図を生じることをみいだし、二つの型がはっきり区別できるよい写真を撮るのに成功した。とくにB型については、1953年、螺旋(らせん)構造であり、その螺旋は34オングストロームで1回転し、その間に10個の塩基を含むこと、またリン酸基の骨格は外側に、したがって塩基は内側にあるなど、重要な知見を含むX線図を得て、J・D・ワトソンとクリックによるDNA分子モデル作成を導いた。のちバークベック・カレッジに移り、タバコモザイクウイルスの構造を研究した。
[石館三枝子]
『アン・セイヤー著、深町真理子訳『ロザリンド・フランクリンとDNA――ぬすまれた栄光』(1979・草思社)』▽『シャロン・バーチュ・マグレイン著、中村友子訳『お母さん、ノーベル賞をもらう――科学を愛した14人の素敵な生き方』(1996・工作舎)』▽『ウラ・フェルシング著、田沢仁・松本友孝訳『ノーベル・フラウエン――素顔の女性科学者』(1996・学会出版センター)』