ボルドー(英語表記)Bordeaux

翻訳|Bordeaux

精選版 日本国語大辞典 「ボルドー」の意味・読み・例文・類語

ボルドー

[1] (Bordeaux) フランス南西部、ガロンヌ川の左岸にある河港都市。葡萄(ぶどう)の産地を控え、葡萄酒の輸出で知られる。
[2] 〘名〙
① 葡萄酒の一つ。フランス南西部ボルドー地方産。ボルドー酒。ボルドーワイン
※頭書大全世界国尽(1869)〈福沢諭吉〉三「酒はぼるどう、ちゃんぱん酒」
③ ボルドー産の赤ワインのような色。

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デジタル大辞泉 「ボルドー」の意味・読み・例文・類語

ボルドー(Bordeaux)

フランス南西部、ヌーベル‐アキテーヌ地方の地方政府所在地。ビスケー湾に注ぐガロンヌ川下流にある。ローマ時代から商港として栄え、ぶどう酒の集散地・輸出港。フランス革命時代はジロンド派の根拠地。

ボルドー産のワイン。
赤ワインのような赤紫色。

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改訂新版 世界大百科事典 「ボルドー」の意味・わかりやすい解説

ボルドー
Bordeaux

フランス南西部,ジロンド県およびアキテーヌ地方の主都。人口21万5277(1999)。ジロンド河口より120km,ガロンヌ河口に近く,おもに左岸に市街が発達する。

起源は前3世紀のケルト人の都市ブルディガラBurdigalaで,ガロンヌ川沿いに地中海に至る通商路の大西洋側の入口に位置した。ローマによる征服後,町は改造され,現在のサント・カトリーヌ通りを軸に市街が形成された。またブドウ栽培が導入され,ガリア各地やイギリスに向け,ブドウ酒の輸出が始められた。3世紀にはアキテーヌの主都となり,遠く中東の商人まで来住する商業都市として繁栄した。中世,イギリス王のギュイエンヌ領有下,ボルドーはその主都として第2の繁栄をみた。とりわけ,イギリス王がブドウ酒輸出の独占権を与えたことにより,その輸出量は飛躍的に増加し,14世紀初めには,20世紀の輸出量に匹敵する年85万hlを輸出するにいたった。この頃,市域は170ha,3万余の住民を擁した。18世紀,ボルドーはアメリカ植民地を中心とする大西洋貿易の発展により,最大の繁栄を迎えた。巨大な富を築いた船主,貿易商の中には,フランドル,イギリス,ドイツなどからの移住者が多く,シャルトロン川岸に一種コスモポリタン的世界を形成した。彼らと高等法院貴族に代表される大地主ブドウ栽培家の間には,経済上はもとより,血縁上も密接なつながりが形成された。このボルドーの支配者層には,以上のような歴史的伝統や通商上の利害から,穏和な自由主義の気風が存在した。18世紀後半にトゥールニTournyら地方総監により都市改造が行われ,アレ・ド・トゥールニなどの街路が開かれ,その周辺には,フランスで最も美しいといわれる市立劇場(1780完成)など,古典様式の建物の整然とした町並みがつくられた。革命前夜には人口10万,フランス最大の地方都市であった。19世紀には,国際貿易構造の変化により,ボルドー港の地位は低下した。市の支配者層はそれに有効に対処できず,経済的には自由主義を唱えるが,社会的には保守化し,退嬰的で閉鎖的な世界にとじこもった。そしてボルドーは,第二帝政下の自由貿易政策により一時繁栄をみるものの,工業化に立ち遅れ,相対的な停滞に陥ることになる。

 第2次大戦後,とくに1960年代から,都市圏はボルドーのコミューンをはるかに越えて急速に拡大し,80年ころには周辺33コミューンに市街化が及んでいる。他方,ドーナツ化現象により,本来のボルドー市はすでにかなりの人口減少をみ,とくに中世以来の街路の残る市中心部で著しい。そこで,一方では,中世の市域にほぼ対応する150haの市街が歴史景観保存地域に指定され,保存・再開発が図られるとともに,同時にその西に隣接するメリアデックMériadeck地区を再開発し,近代的な商業・行政センターを設け,都市機能の大規模な移転が行われた。

一部の先進工業(宇宙航空,エレクトロニクス)や自動車工場の進出はみられるが,依然工業化は遅れている。港の機能は,船舶大型化により,ル・ベルドンに移り,石油基地やコンテナ埠頭などの整備が進められているが,貨物量で全国第5~6位,地方港の位置にとどまっている。要するにボルドーの主要な活動は,アキテーヌ地方の主都としてのそれであり,ブドウ酒をはじめとする農産物の集散地,また商業・金融や行政,大学や各種研究所を含む公務が,雇用者の4分の3を占めている。なお,ラ・ボエシー,モンテーニュ,モンテスキューは,いずれもボルドー高等法院の法官であった。またモーリヤック,アヌイの出身地でもある。
執筆者:

市中心部にはイギリス王支配期の建造物が多く残っている。サント・クロア教会(12世紀)のファサードは,玄関両横にめくらアーチを備え,飾迫持(かざりせりもち)には獣をつっつく鳥のモティーフを繰り返すなど,サントンジュ地方のロマネスク様式に近い。サンタンドレ大聖堂は,〈王の玄関〉(13世紀中ごろ)の最後の審判を表すタンパン,入口左右の使徒像,上方アーケードの人像などゴシック期の優れた彫刻群で知られる。サン・スーラン教会南側にも最後の審判を中心とする玄関構成が保存されている。サンタンドレ大聖堂脇の〈ペー・ベルラン塔〉とサン・ミシェル教会の六角鐘楼(高さ114m)は,ともに15世紀の建造。また19~20世紀のフランス絵画のほか,イタリア,フランドル,オランダの作品を収蔵するボルドー美術館,装飾美術館がある。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボルドー」の意味・わかりやすい解説

ボルドー
ぼるどー
Bordeaux

フランス南西部、ジロンド県の県都。大西洋に注ぐガロンヌ川に沿い、河口から98キロメートル上流に位置する。人口21万5363(1999)、24万9712(2015センサス)。国内北部、スペイン、地中海方面を結節する道路、鉄道交通の要衝で、地中海とはミディ運河によっても結ばれる。河港を有する港湾都市で、貨物取扱量は多いが、マルセイユ、ル・アーブルなどには及ばない。輸出の中心は周辺で生産されるボルドーワインで、輸入は石油、鉄鉱石、石炭、燐(りん)鉱石などの原材料が多い。産業は瓶、樽(たる)、コルク、木枠の製造などワイン関連産業と、輸入原材料を加工する製鉄、化学などの工業が発達し、石油製品は輸出している。ほかに製糖などの食品工業や造船業も行われる。市内の主要建造物は、大司教座教会でゴシック様式の彫刻群を誇るサンタンドレ大聖堂(13~14世紀)、15世紀の鐘楼ペー・ベルラン、18世紀の劇場グラン・テアトル、110メートルの鐘塔をもつ15世紀のサン・ミシェル教会、12世紀のサント・クロア教会などである。思想家モンテスキュー、モラリストのモンテーニュの出身地で、2人の像が市内の大広場にあり、1441年創建のボルドー大学構内に後者の墓がある。

[青木伸好]

歴史

ローマ時代すでにケルト人商人の港市であったが、8世紀より12世紀にかけてアキテーヌ王国、ガスコーニュ公国、アキテーヌ公国の首都となり、1152年よりアキテーヌ公女(アリエノール・ダキテーヌ)が、イギリス王となるアンジュー伯アンリ(ヘンリー2世)と再婚したためイギリスの支配下に入り、1453年百年戦争の終結とともにフランスに吸収された。周辺地域はローマ時代からワインの大生産地であり、13世紀にはイギリス、スペインへのワインの大輸出港として繁栄し、ボルドー商人たちはイギリス王からロンドン市民の身分を与えられたほどであった。またその財力をもってボルドー大司教を教皇位につけた(クレメンス5世)こともある。百年戦争下に一時イギリスのエドワード(黒太子)の宮廷が置かれ、サンタンドレ大聖堂などの建築が行われた。18世紀に入り、植民地経営が開始されると造船業が発展し、ワイン、砂糖などを主商品とするアンティル諸島、セネガル・ギニアとの三角貿易によって大いに繁栄をみた。フランス革命当時はジロンド派の根拠地となり、1793年6月の反国民公会暴動では酸鼻な大弾圧を受けている。ついで大陸封鎖により、港が破壊され、人口半減の苦境にもたたされた。プロイセン・フランス戦争後の1871年ここに国民議会が開かれ、第一次、第二次の両世界大戦に際しては一時政府がこの地に移されたこともある。

[石原 司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボルドー」の意味・わかりやすい解説

ボルドー
Bordeaux

フランス南西部,ビスケー湾岸ジロンド県の県都。ガロンヌ川左岸に位置する港湾都市で,下流のジロンド川沿岸にポーヤック,ブライ,ベックダンベスなどの付属港を有し,港の荷扱い量は年間 1000万tに達する。ガロンヌ川流域はコムギ,野菜,果実などの農業地帯として知られ,特にボルドー・ワインは世界的に有名。石炭,石油の輸入とともに,車両,造船,航空機などの重工業や化学工業が急速に発展。 1441年創立の大学を中心に文化の中心地としての役割も大きい。4世紀にはローマ帝国の属州アクィタニア・セクンダの首都として繁栄,大円形劇場跡など当時の史跡も多い。ほかに 1998年にサンチアゴデコンポステラへの巡礼路の一部として,世界遺産の文化遺産に登録されたサンタンドレ大聖堂 (12~16世紀) ,サン・ミッシェル教会 (14~16世紀) ,サン・スラン聖堂 (11世紀) や美術館など有名なものも多いが,特に 18世紀の建造物,広場,街路などは特色がある。 1154~1453年イギリス領。フランス革命期にはジロンド派の本拠地で,普仏戦争中の 1871年に国民議会が開催された。 1981年 10月にはパリとの間に全長 560kmの高速道路が完成した。ガロンヌ川が蛇行する形から「月の港」と呼ばれるボルドー港は,その歴史的町並みにより 2007年世界遺産の文化遺産に登録された。人口 23万5891(2008)。

ボルドー
Bordeaux, Henry

[生]1870.1.25. トノンレバン
[没]1963.3.29. パリ
フランスの小説家。ブールジェの系列に属する伝統的なカトリック作家で,ビリエ・ド・リラダンの伝記やエッセーもある。主著『生の恐怖』 La Peur de vivre (1902) ,『ロックビラール家の人々』 Les Roquevillard (06) ,『足跡の上の雪』 La Neige sur les pas (11) 。アカデミー・フランセーズ会員 (19) 。

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百科事典マイペディア 「ボルドー」の意味・わかりやすい解説

ボルドー

フランス南西部,ジロンド県の県都。ジロンド川河口より約100km,ガロンヌ川左岸にある。ブドウ酒の醸造・取引・輸出で世界的に有名。鉄鋼,航空機,製油,化学などの工業も行われる。ローマ時代の遺跡,12世紀のサンタンドレ大聖堂,大学(1441年創立)などがある。モンテーニュ,モンテスキューが市の近郊で生まれた。ローマ時代はアクイタニアの首都,9世紀ノルマン侵入,1154年―1453年英領。第1次・第2次大戦中は政府が一時移転。21万336人,都市圏人口68万5000人以上(1990)。
→関連項目アキテーヌフランス

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色名がわかる辞典 「ボルドー」の解説

ボルドー【Bordeaux】

色名の一つ。JISの色彩規格では「ごく暗い」としている。一般に、ボルドー産の赤ワインのような暗い赤をさす。一般的な赤ワインの色を示すワインレッドよりも暗い赤をしている。一方、フランス東部の都市ブルゴーニュに産する赤ワインの色名バーガンディーよりは、わずかに明るい。ボルドーはフランス南西部のガロンヌ川に沿った港湾都市。赤ワインの産地として世界的に知られる。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ボルドー」の解説

ボルドー
Bordeaux

フランス南西部,ガロンヌ川左岸に位置する港湾都市
アキテーヌ盆地第一の都市で,ローマ時代の遺物が多い。イギリスの支配下にあった12〜15世紀には,ぶどう酒の輸出港として栄えた。その後一時衰えたが,西インド諸島との貿易で再び繁栄をとりもどし,18世紀には頂点に達した。フランス革命中,ジロンド派の中心となり,さらに1871年国民議会が開かれて第三共和政の誕生をみた。また1914年と40年には臨時政府が置かれた。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ボルドー」の解説

ボルドー
Bordeaux

フランス西部ギュイエンヌ地方の旧都,大司教座。1152年アリエノール・ダキテーヌのイングランド王ヘンリ2世との結婚によりプランタジネット領となったが,1453年シャルル7世がこれを奪回した。

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世界大百科事典(旧版)内のボルドーの言及

【アキテーヌ】より

…フランス南西部,ガロンヌ川中・下流域(アキテーヌ盆地中・西部)を中心とした地方。その範囲は,時代によってはなはだしく異なるが,今日ではボルドーを主都とするギュイエンヌGuyenneおよびその周辺の諸地方,すなわちオーニスAunis(主都ラ・ロシェル),サントンジュSaintonge(サント),アングーモアAngoumois(アングレーム),ペリゴールPérigord(ペリグー),アジュネAgenais(アジャン),ケルシーQuercy,ガスコーニュGascogneなどを総称して,アキテーヌ地方と呼ぶのが通例である。
[歴史]
 〈アキテーヌ〉という名称は,この地方が前56年,ローマに征服され属州とされ,アクイタニアAquitania(〈水の国〉の意)と呼ばれたことに由来する。…

【ブドウ酒(葡萄酒)】より

…このメソポタミアのブドウ酒づくりの技術はエジプト,ギリシアに伝わり,さらにローマ帝国の拡大に伴って西ヨーロッパにも広まった。5世紀の末ころまでに,フランスのボルドー,ブルゴーニュ,シャンパーニュ,あるいはドイツのライン,モーゼルなどの銘醸地がひらかれている。また,赤ワインがキリスト教の行事に使われるようになって,教会や修道院によるブドウ園の経営,ブドウ酒醸造が行われ,これがブドウ酒の普及に貢献するところも大であった。…

※「ボルドー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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