日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポスタン」の意味・わかりやすい解説
ポスタン
ぽすたん
Michael Moissey Postan
(1898―1981)
イギリスの経済史家。ロシアのベッサラビアに生まれ、若くしてイギリスへ移住。ロンドン大学を卒業後、同大学の講師を経て、1935年にケンブリッジ大学に移り、1939~1965年の間同大学経済史教授を務めた。1937年、彼の師で中世史学者のアイリン・パワーと結婚したが、3年後死別。ポスタンは、長年にわたって『経済史評論』の編集に携わるとともに、同誌に多くの論文を発表し、中世経済史研究の第一人者の地位を確立した。主要著作には『15世紀イギリス商業の研究』(1933)や『中世末期の人口減少の経済的根拠』(1950)など商業史と人口史についての業績のほかに、イギリスの賦役の金納化を扱った『賦役の年代考証』(1937。邦訳は『イギリス封建社会の展開』に収録)、封建制の危機について独自の見解を展開した『15世紀』(1939。邦訳同上)や、彼のイギリス中世経済史研究の総括ともいうべき『中世の経済と社会』(1972)などがあり、いずれも高い評価を受けた。第二次世界大戦後は現代史に強い関心を示し、『西ヨーロッパ経済史――1945~1964年』(1967。邦訳書名は『戦後ヨーロッパ経済史』)を著した。
[根本久雄]
『宮下武平・中村隆英監訳『戦後ヨーロッパ経済史』(1969・筑摩書房)』▽『佐藤伊久男訳『イギリス封建社会の展開』第2版(1976・未来社)』▽『保坂栄一・佐藤伊久男訳『中世の経済と社会』(1983・未来社)』