日本大百科全書(ニッポニカ) 「マス・メディア宣言」の意味・わかりやすい解説
マス・メディア宣言
ますめでぃあせんげん
マス・メディアによる国際的な情報流通に関する諸原則をうたった宣言。1978年11月22日、ユネスコ(国連教育科学文化機関)第20回総会で採択された決議「平和と国際理解の強化、人権の促進、ならびに人種差別主義、アパルトヘイトおよび戦争の扇動に対抗するうえでのマス・メディアの貢献に関する基本原則の宣言」の略称。前文および本文11か条からなる。
マス・メディアによる国際的な情報流通問題は、第二次世界大戦後、主として国連の場で世界的課題の一つとして論議されてきた。国連情報自由会議(1948)、国連経済社会理事会情報自由小委員会における情報自由協約案の審議(1961年で中断)などがその例。しかし、情報流通の自由を原則とした西側主導のこれらの動きは、冷戦を背景とした東西対立の激化から頓挫(とんざ)した。ところが1970年代に入り、当時のソ連が戦争宣伝、人種差別、アパルトヘイト(人種隔離政策)反対の新たな国際戦略に絡めたマス・メディア新原則案を提案した。他方、情報流通の西側偏在の状況を国家自立の障害視する考えから改革の必要を主張する南側発展途上国とくに非同盟諸国会議参加グループがこれに同調した。その結果、ユネスコを舞台に西側対東・南側の間で激しい論戦が展開されたが、結局妥協が成立、マス・メディア宣言が採択された。当時、南側(東側も同調)はこれを新国際情報秩序形成の出発点と位置づけ、積極的推進を図ったが、西側諸国は消極的姿勢をとっていた。
[内川芳美]
『コミュニケーション問題研究国際委員会著、永井道雄監訳『多くの声 一つの世界』(1980・日本放送出版協会)』