知恵蔵 「ミット・ロムニー」の解説
ミット・ロムニー
1947年3月12日、ミシガン州デトロイト生まれ。2歳年下のアン夫人と5人の息子を持つ。父親はミシガン州知事を3期務めたジョージ・ロムニー。代々、モルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)を信仰しており、ミット・ロムニーも信者であることを隠さない。スタンフォード大学に入学後、2年間フランスでモルモン教の布教活動を行い、帰国後は同教が支援するブリガムヤング大学(ユタ州)で学んだ。
その後、ハーバード大学で法科・経営の両学位を取得。卒業後は、マサチューセッツ州でビジネスコンサルタントとしての実績を積み、84年に投資会社のベインキャピタルを設立した。ファンドの運用益で得た現在の推定資産は2億5千万ドル(約200億円)で、2011年秋の「ウォール街を占拠せよ」デモで批判の的になった高額所得者層1%のなかでも最上位に入る。02年のソルトレークシティー冬季オリンピックでは、組織委員会の会長として財政難を立て直し、腐敗の横行で開幕が危ぶまれていた大会を成功に導いた。
政治家としての経歴は浅く、03~07年にマサチューセッツ州知事を1期務めただけである。この時、州の財政赤字を解消させたことから、五輪での実績と併せ、財政再建の経営手腕が高く評価されることとなった。また、同州は全米屈指のリベラルな州で、議会では民主党が多数を占めていたが、ロムニーは民主党議員の協力を取り付け、州単独では初となる公的皆保険制度(ロムニーケア)を導入させている。これは政治家としての最大のキャリアだが、皮肉にもオバマ政権が進める「公平」な医療改革(オバマケア)そのものであり、予備選では「自由」を求め、「大きな政府」を嫌う右派陣営から激しいバッシングを受けた。
(大迫秀樹 フリー編集者 / 2012年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報