ミロン反応(読み)みろんはんのう(英語表記)Millon's reaction

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミロン反応」の意味・わかりやすい解説

ミロン反応
みろんはんのう
Millon's reaction

ミロン試薬によりタンパク質検出する呈色反応として古くから知られている反応。フランスの化学者ミロンNicolas Auguste Eugène Millon(1812―1867)により開発された。この反応に使うミロン試薬は、金属状の水銀発煙硝酸加熱して溶かしたのち、水に薄めてつくる。ミロン試薬を試料に加えると、タンパク質が含まれている場合には白色沈殿を生じ、60~70℃に加熱するとれんが色になる。この反応は、タンパク質を構成しているチロシン、β(ベータ)-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニンなどのアミノ酸フェノール残基が水銀化合物を形成し、亜硝酸によりニトロソ化されて着色した水銀錯塩になるためと考えられている。タンパク質のほかにフェノール類もこの反応を示す。呈色反応を行うには、試料に、その容量の3分の1のミロン試薬を加えて加熱する。尿中のフェノールの呈色反応や繊維鑑別試験にも用いられたことがある。

[廣田 穰 2016年11月18日]

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改訂新版 世界大百科事典 「ミロン反応」の意味・わかりやすい解説

ミロン反応 (ミロンはんのう)
Millon reaction

タンパク質の呈色反応の一つ。フェノール性水酸基をもつ芳香族化合物一般にみられる反応であり,フェノール性水酸基をその構成要素として含むアミノ酸であるチロシンの検出,定量に利用できる。しかし現在では,スペクトルによる分析が主流となっており,またこの反応では水銀を使用するので環境汚染の問題もあって,ほとんど利用されることはない。試料溶液にミロン試薬(水銀10gに濃硝酸20mlを加えて加熱溶解し,その上澄液を2倍量の水で希釈したもの)を加えると,フェノール性水酸基が存在すれば白色沈殿を生じる。加熱すると沈殿は赤褐色に変わるか,または溶けて赤褐色の溶液となる。この試薬は,長時間放置すると亜硝酸が消失して感度が低下するので,次のような改良法が多く利用された。試料溶液に同体積の10%硫酸水銀(Ⅱ)の10%硫酸水溶液を加え,100℃で10~15分加熱した後,流水で冷却して5%亜硝酸ナトリウム水溶液を滴下すると,フェノール性水酸基が存在すれば濃赤色に変わる。
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化学辞典 第2版 「ミロン反応」の解説

ミロン反応
ミロンハンノウ
Millon's reaction

タンパク質の呈色反応の一つ.フェノール性ヒドロキシ基をもつアミノ酸であるチロシンやヒドロキシフェニルアラニンの検出・定量法.チロシンにミロン試薬(水銀を発煙硝酸に溶解したもの)を反応させるとニトロソフェノールの水銀錯塩が生成し,褐色を呈する.改良法として,硫酸水銀(Ⅱ)と亜硝酸ナトリウムで濃赤色(λmax 480 nm)に発色させる方法がある.反応はフェノールによるので,サリチル酸やチモールなども陽性である.NaCl,トリプトファンなどにより阻害される.臨床応用として尿中のフェノールの検出に用いられる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミロン反応」の意味・わかりやすい解説

ミロン反応
ミロンはんのう
Millon reaction

蛋白質の呈色反応。フェノール性水酸基をもつチロシン,ジオキシフェニルアラニンなどが呈色に関係する。検体に硝酸水銀と亜硝酸を含む硝酸酸性溶液すなわちミロン試薬を加え,60~70℃に加温するか,室温に数十分間放置すると,赤色を呈する。この反応はフェノール化合物に共通なもので,蛋白質以外でも起る。遊離チロシンの比色定量に用いることもできる。

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栄養・生化学辞典 「ミロン反応」の解説

ミロン反応

 タンパク質やアミノ酸の検出反応.チロシンと水銀が反応して赤褐色の水銀錯塩を生成する反応を利用する.

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