出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
球技の一種。正称は〈ラグビーフットボールrugby football〉というが,とくにアマチュアのラグビーは〈ユニオンラグビーunion rugby〉と呼ばれ15人制(7人制のセブン・ア・サイドもある),プロフェッショナルのラグビーは〈リーグラグビーleague rugby〉と呼ばれ13人制である。ラグビー創始以前のフットボールについては〈サッカー〉の項を参照されたい。
イギリスのパブリック・スクール(とくにイートン,ハロー,ラグビー,ウィンチェスター)では,教育の一環として各校独特のルールでフットボールが盛んに行われていた。1823年ラグビー校における試合中,W.W.エリスが興奮のあまり規則と慣習に反し,ボールを腕に抱えて走ったことが契機となって,ラグビーゲームが創始されたといわれる。また一説には,エリスは興奮のあまりボールを抱えて走ったのではなく,故郷アイルランドのゲーリックフットボールgaelic footballのプレーをそのまま行ったにすぎないともいわれる(ラグビーの起源についてはその他の説もある)。そののち学生間に急速に普及し,クラブが多数設立され対抗試合が盛んになると,規則の統一が必要となり,足だけを使うサッカーを愛好するものは71年にフットボール協会Football Associationを結成し,手も足も使うラグビーを愛好するものは71年にラグビーフットボール・ユニオンをイングランドで結成した。ラグビーフットボールの名称は,そのさい全面的にラグビー校のフットボールの規則を基準として採用したことに由来する。ついで72年にスコットランド,79年アイルランド,80年ウェールズに協会が設立され,87年プリンス・オブ・ウェールズ(のちのエドワード7世)がイギリスのラグビー協会総裁となったことにより,ラグビーはイギリスの国技としての基礎を固めた。1906年フランスが国際試合に参加,ニュージーランド,南アフリカなどにも組織が結成された。国際交流試合が盛んになると種々の問題が生じるようになり,こうした問題解決のため,1886年〈国際ラグビーフットボール評議会International Rugby Football Board〉(通称インターナショナル・ボード。1997年〈国際ラグビー評議会International Rugby Board〉となる)が結成され,規則の構成および規則の解釈の確立,国際試合で生じたあらゆる問題の提訴および疑義の解決などにあたることとなった。現在はイングランド,スコットランド,アイルランド,ウェールズ,フランス,オーストラリア,ニュージーランド,南アフリカ共和国の8ヵ国(地域を含む)にアルゼンチン,カナダ,イタリア,日本を加えた12ヵ国(地域を含む)による理事会を中心に運営されている。これらの国以外にもヨーロッパではルーマニアをはじめベルギー,スイス,ドイツ,ロシアなど多くの国々で競技が行われている。アジアでは韓国,香港(ホンコン),タイ,シンガポール,台湾,スリランカ,中国などに普及,1968年にはアジア・ユニオンが結成され,69年からアジア選手権が開催されている。このほかオセアニア地域ではフィジー,トンガ,サモアなど,南北アメリカ大陸ではアメリカ,ブラジルなどが国際ラグビー評議会に加盟している。現在,世界で加盟する国・地域の数は約100にのぼる。
1987年に初めての世界選手権(第1回ワールドカップ)がニュージーランドとオーストラリアで開催され,以後4年に一度,ラグビー世界一の座が争われている。一方,女子も90年に世界大会が開かれ,現在では国際大会が盛んに行われている。またワールドカップの成功などにより,プロ契約を求めてリーグラグビーへ移籍する選手が続出するなど,アマチュアリズムの精神が大きく揺らぎ,ついに95年にはアマチュア規定の削除が決定された。
日本では,慶応義塾に赴任したクラークEdward B.Clark(1874-1934)とケンブリッジ大学の留学から帰国した田中銀之助(1873-1943)が,1899年慶応の塾生に指導したのが始まりである。当初慶応は,それ以前からあった横浜や神戸の外人クラブと対戦したが,1910年第三高等学校,11年には同志社にラグビー部ができ,3校の定期戦が日本のラグビーの草分けとなった。大正期には旧制高校や大学を中心に盛んになり,22年の早慶戦をはじめ対抗戦が定期的に組まれるようになった。海外との交流は,25年慶応大学の上海(シヤンハイ)遠征に始まるが,第2次大戦後はオックスフォード大学,ケンブリッジ大学,ニュージーランドやイングランド,ウェールズ,フランス,スコットランド,アメリカ,アイルランドなどからもチームを招き,あるいは遠征して毎年国際試合を行っている。68年全日本がニュージーランドのオールブラックス・ジュニアを破り,83年にはウェールズに善戦するなど,国際的にも実力を向上しつつある。国内では全国大学選手権大会,全国社会人大会,全国高校大会などが行われ,大学と社会人(クラブチームを含む)の8チームのトーナメントによって日本選手権が争われる。97年現在,日本ラグビーフットボール協会(1926年創立)への加盟チームは4900を突破している。
競技場は縦144m以内,横70m以内の長方形に地面を区画して,図のように,ゴールライン,ハーフウェーライン,22メートルライン,デッドボールライン,10メートルライン,5メートルラインおよびタッチラインの各線をもって区画する。ゴールポストはゴールライン中央に,5.6mの間隔をおいて,高さ3.4m以上の2本の棒柱を立て,地面から3mのところに横木(クロスバー)を渡す。ボールは図のような規格の4枚張り,楕円形のもの,重さは400~440g。泥がつかず,つかみやすいように特別に加工してもよく,外側が皮でなくてもよい。服装はふつうジャージー,パンツ,ストッキングに革(またはゴム,アルミニウム,承認された合成樹脂)の鋲(びょう)を打ったラグビー用の靴をはき,他の競技者に危険をおよぼすようなものを身につけてはならない。
それぞれ15名からなる2チームによってボールを奪い合い,相手のインゴールにトライあるいはゴールし合う。この目的を達成するために創始以来種々のフォーメーションが考えられたが,現在は8人のフォーワード(FW)と7人のバックス(BK)に分かれる。フォワードはフロントロー(第1列),セカンドロー(第2列),サードロー(第3列)の3列に編成され,バックスはハーフバック(HB)2人,スリークオーターバック(TB)4人,フルバック(FB)1人で構成されるのが通例で,試合時間は80分以内で,前半と後半の間に10分間のハーフタイムがある。まずトス(日本ではじゃん拳が使われる)でキックオフ(相手陣にボールをける)とサイドを決め,キックオフにより試合が始まる。得点があれば得点された側が,また後半にはサイドをかえ前半と逆のチームのキックオフで試合を再開する。ボールがタッチラインの外に出たときはラインアウトとなり,両チーム2名以上のプレーヤーが,5メートルラインの内側に双方1mの間隔をとってタッチラインと直角に並び,ボールを外に出した相手側のプレーヤーが投げ入れる。ボールがデッドボールラインを越えるかタッチインゴールに入ったとき,または攻撃側がインゴールに入れたボールを防御側が地面につけたときはドロップアウトとなり,22メートルライン内からドロップキックによって試合を再開する。得点は相手側インゴールに適法にボールをつけるとトライ(T)となり5点,トライ後ボールをつけた地点とタッチラインの平行線上からゴールキックを行う権利が与えられ,ボールがクロスバーを越えればゴール(G)となり,さらに2点が加えられて計7点となる。相手側の反則で得たペナルティキックがクロスバーを越えて入った場合をペナルティゴール(PG),プレー続行中に保持したボールをゴールポストに向かってけり,ボールがクロスバーを越えて入った場合をドロップゴール(DG)といい,それぞれ3点となる。PGはプレースキックでもドロップキックでもよいが,DGはかならずドロップキックでなければならない。こうして試合終了(ノーサイドという)までに多く得点したチームが勝ちとなるが,同点でも延長は行わない。
プレーヤーは手でボールを持って走り,自分よりうしろのものにパスし,あるいはキックやドリブルで前進する。相手の攻撃を防ぐには,キックやドリブルされたボールをとったり,相手のパスをインターセプトするほか,ボールを持った相手をタックルして倒したり,地上のボールを倒れこんでかかえるセービングなどがある。タックル,セービングのあとは,通常両チームそれぞれ1人以上のプレーヤーが密集して地面にあるボールを奪い合うが,この状態をラックruckという。ラックが構成されれば,ボールを手で扱ってはならない。タックルされたプレーヤーが倒れずにボールをキープし,両チームのプレーヤーが身体を密着させてボールを奪い合う状態をモールmaulといい,ラック,モールが膠着(こうちゃく)した場合,レフェリーはスクラムscrummageを命じる。プレー中の反則については,重い反則にはペナルティーキック,やや重い反則にはフリーキックが相手側に与えられる。軽い反則にはスクラムが科せられ,反則を犯した相手側のチームのプレーヤーがボールを入れて試合を再開する。競技中に反則があっても,反則しなかったチームが利益を得る場合,アドバンテージルールが適用され,レフェリーは笛を吹かずそのまま試合を続行させる。競技時間,得点,規則の適用および判定は1人のレフェリーによって裁定され,2人のタッチジャッジがこれを補佐する。とくに重大な反則や非紳士的態度のあったときそのプレーヤーを退場させたり,試合続行が不可能と判断したとき中止することもレフェリーの権限である。試合中に負傷者が出た場合や,戦術的な選手の交代は6名まで認められる。また特別ルールとして退場に準ずるシンビン(不正なプレーをしたプレーヤーに10分間の一時的退出措置)が適用される。
ラグビーが普及するに伴い,とくにイギリス近代産業の発祥地であるヨークシャー地方では工場労働者のあいだで盛んに行われるようになり,1880年ころから日給労働者が試合のために失う金銭を他の名目で給与する傾向がふえてきた。こうした金銭給与問題をめぐりラグビーフットボール・ユニオンは何度も論議を重ねた結果,〈いかなる形式においても金銭を給与することを禁ずる〉という裁決をくだしたため,95年ついにイングランド北部協会はラグビーフットボール・ユニオンから脱退し,北部ラグビーフットボール・ユニオンを結成した。その後名称を〈リーグラグビー〉としてイギリスやフランスで発展した。
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…サッカーやラグビーやアメリカン・フットボールなどのフットボール系統の競技や,ホッケーやアイスホッケーといったスティックを使う球技,それに水球などで,相手ゴール方向への行動を制約している規定。一般的にボール(アイスホッケーではパック)を支配保持していないプレーヤーが対象で,ボールよりも前方の,ルールに定められた侵入禁止地域やプレー禁止地域に位置すること,およびその地点でプレーする反則をいう。…
※「ラグビー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...
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