リシノール酸(読み)リシノールさん(英語表記)ricinoleic acid

精選版 日本国語大辞典 「リシノール酸」の意味・読み・例文・類語

リシノール‐さん【リシノール酸】

〘名〙 (リシノールはRicinol) ひまし油鹸化して得られる化合物化学式は C18H34O3 オレイン酸水酸基一個導入した構造をもち、単離すると堅い結晶状になる。ドライクリーニング用石鹸原料

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改訂新版 世界大百科事典 「リシノール酸」の意味・わかりやすい解説

リシノール酸 (リシノールさん)
ricinoleic acid

化学式CH3(CH25CH(OH)CH2CH=CH(CH27COOH。リシノレイン酸ともいう。(+)12-オキシ-シス-9-オクタデセン酸。オレイン酸の12位の炭素につく水素をOH基で置換した構造をもつ代表的なオキシ酸である。グリセリドの形でヒマシ油脂肪酸主成分(80~87%)となっており,ヒマシ油の特異な性質はこれが原因である。融点α=7.7℃,β=16.0℃,γ=5.0℃,沸点230~235℃(9mmHg),比重d2474=0.940,屈折率n2D0=1.4716,比旋光度[α]2D5=+7.79°。エチルアルコールなどとは自由に混合するが,石油エーテルには難溶である。熱に不安定で熱分解して10-ウンデセン酸CH2=CH(CH28COOHとヘプタナール(エナントール)CH3(CH25CHOになる。硫酸,硫酸水素ナトリウムなどの脱水剤の存在下に加熱すると,リノール酸および共役二重結合を有する9-11-オクタデカジエン酸を生ずる。これは脱水ヒマシ油脂肪酸の成分である。リシノール酸に濃硫酸クロロスルホン酸などを低温(約10℃)で作用させるとリシノール酸酸性硫酸エステルCH3(CH25CH(OSO3H)CH2CH=CH(CH27COOHを生ずる。このような反応を硫酸化sulfationといい,生成物アンモニアまたはソーダ油で中和したのが硫酸化油ロート油)である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リシノール酸」の意味・わかりやすい解説

リシノール酸
りしのーるさん
ricinolic acid

不飽和ヒドロキシカルボン酸の一つ。リシノレイン酸ricinoleic acidともよばれる。12-ヒドロキシ-9-cis(シス)-オクタデセン酸の構造をもつ。

 グリセリドとしてひまし油中に存在するので、ひまし油をけん化して得られる混合脂肪酸をアセトンに溶かして、分別結晶を行うと得られる。

 常温では無色の油状液体で、エタノール(エチルアルコール)、エーテル、クロロホルムによく溶ける。塗料、印刷インキ、潤滑油、化粧品、ドライクリーニング用のせっけんを製造する原料となる。このほかに、ひまし油は下剤、軟膏(なんこう)基材として薬用に供されている。

[廣田 穰 2016年11月18日]

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化学辞典 第2版 「リシノール酸」の解説

リシノール酸
リシノールサン
ricinolic acid

[R(Z)]-12-hydroxy-9-octadecenoic acid.C18H34O3(298.46).リシノレイン酸ともいう.グリセリドとしてひまし油(80~85%)中に存在する.ひまし油の混合酸からアセトン溶液を冷却(-20~-15 ℃)して飽和酸を除いて,精製を繰り返すと得られる.結晶状の塊.融点5.5 ℃,沸点245 ℃(1.33 kPa).0.940.+7.15°(アセトン).1.4716.アルコール類,アセトン,エーテル,クロロホルムに可溶.ドライクリーニング用せっけんの原料.[CAS 141-22-0]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リシノール酸」の意味・わかりやすい解説

リシノール酸
リシノールさん
ricinoleic acid

水酸基と炭素-炭素二重結合をそれぞれ1個有するカルボン酸。次の化学式をもつ。

CH3(CH2)5CH(OH)CH2CH=CH(CH2)7COOH

ひまし油中に存在し,脂肪酸として 90%を占める。油状で,融点 5.5℃,沸点 245℃ (10mmHg) 。ドライクリーニング用の石鹸や繊維油剤の製造原料となる。

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百科事典マイペディア 「リシノール酸」の意味・わかりやすい解説

リシノール酸【リシノールさん】

化学式はCH3(CH25CH(OH)CH2CH=CH(CH27COOH。リシノレイン酸とも。融点5℃,沸点230〜235℃(9mmHg)。ヒマシ油の主成分をなす脂肪酸で,ヒマシ油中にグリセリンエステルとして存在。繊維油剤(繊維処理用の界面活性剤)の製造などに使用。

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栄養・生化学辞典 「リシノール酸」の解説

リシノール酸

 C18H34O3 (mw298.47).

 ひまし油などに存在する.

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