一心太助(読み)イッシンタスケ

デジタル大辞泉 「一心太助」の意味・読み・例文・類語

いっしん‐たすけ【一心太助】

戯曲浪花節なにわぶし講談主人公江戸で魚屋を営み、江戸っ子かたぎの侠気に富んだ人物で、大久保彦左衛門愛顧をうけたという。歌舞伎名高手毬諷実録なにたかしまりうたじつろく」などに登場する。

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精選版 日本国語大辞典 「一心太助」の意味・読み・例文・類語

いっしん‐たすけ【一心太助】

  1. [ 一 ] 江戸初期の魚屋。男気に富み、大久保彦左衛門の愛顧を受けて活躍したという。実在は疑問。
  2. [ 二 ] [ 一 ]の登場する歌舞伎脚本。時代世話物。
    1. 本名題名高手毬諷実録(なにたかしまりうたじつろく)」。八幕。三世桜田治助作。安政二年(一八五五)江戸中村座初演。
    2. 本名題「芽出柳緑翠松前(めだしやなぎみどりのまつまえ)」。河竹黙阿彌作。明治一六年(一八八三)東京新富座初演。
    3. 本名題「偽鍍金蓮華組上(まがいきんれんげのくみあげ)」。五幕。竹柴其水作。明治三七年(一九〇四)東京明治座初演。

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改訂新版 世界大百科事典 「一心太助」の意味・わかりやすい解説

一心太助 (いっしんたすけ)

大久保彦左衛門に愛されたと伝えられる魚商。生没年不詳。俠勇あって〈一心〉の名は首(または腕ともいう)に〈一心白道〉の4字を入墨したところから呼ばれたとされる。実録本《大久保武蔵鐙(あぶみ)》によって大久保政談にからんで登場,浅草茅町の穀商松前屋五郎兵衛の無実をはらす役割を果たした。1855年(安政2)7月江戸中村座初演の《名高手毬諷(なにたかしまりうた)実録》(3世桜田治助作)で4世市川小団次が太助ほか5役を演じ好評。ほかに83年1月初演《芽出柳緑翠松前(めだしやなぎみどりのまつまえ)》(河竹黙阿弥作),88年11月東京市村座初演《武蔵鐙誉大久保》(3世河竹新七作),1904年11月東京明治座初演《偽鍍金蓮華組上(まがいめつきれんげのくみあげ)》(竹柴其水作)などの後続作があり,いずれも太助は義俠心にとむ江戸っ子気質の性格として形象化された。
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朝日日本歴史人物事典 「一心太助」の解説

一心太助

江戸前期の魚屋。江戸の芝白金(東京都港区)立行寺の記録(石塔)では延宝2(1674)年12月23日没。架空の人物のため,実録体小説『大久保武蔵鐙』など伝承により異同がある。桃川実口演(『文芸倶楽部』1901年7月15日号)によると,本姓藪尻,彫り物の「一心如鏡」により一心太助と称した。三河国(愛知県)吉良農民で,領主大久保彦左衛門に見いだされ,江戸で士分に取り立てられる。彦左衛門邸で饗応の際,皿を割った腰元菊野の罪を引き受け,残りの皿をすべて割るが,彦左衛門は刀の裏で襟元を触り罪を許す。これを機に太助は魚屋となり,江戸の諸方へ出入りをし,市井の事を聞き出し,彦左衛門に通じ,懐刀と呼ばれて功があった。川柳に詠まれたのは天保4(1833)年刊の『柳多留』と遅く,劇中人物としても安政2(1855)年江戸中村座初演の「名高手毬諷実録」が初めてと思われ,知名度は江戸期よりも今日の方がはるかに高いであろう。<参考文献>『三田村鳶魚全集』5巻

(延広真治)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「一心太助」の意味・わかりやすい解説

一心太助
いっしんたすけ

生没年不詳。『大久保実記武蔵鐙(むさしあぶみ)』の「松前屋五郎兵衛之伝記」に登場する魚屋。同書によると、もと大久保彦左衛門(ひこざえもん)(忠教(ただたか))の草履取(ぞうりとり)で、のち江戸・両国あたりで魚の行商を営み、彦左衛門にその侠気(きょうき)を愛された。松前屋、実は津軽藩家老の悴(せがれ)松前帯刀(たてわき)の一件にかかわり彦左衛門を助けて、その無実を明らかにしたとしている。一心の名は、人を救うためにわが一心をもって臨み、果たさぬことがなかったため、その侠気を賞してよぶようになったという。講談などに取り上げられて人気者となった。架空の人物か。

[比留間尚]

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百科事典マイペディア 「一心太助」の意味・わかりやすい解説

一心太助【いっしんたすけ】

大久保彦左衛門に愛されたと伝えられる江戸の魚屋。生没年不詳。実録本《大久保武蔵鐙(あぶみ)》に登場する。性潔白で義侠心に富み,寛永(かんえい)年間(1624年―1644年)浅草の穀商と旗本が対立した際,真相をさぐって大久保に告げ疑獄を防いだといわれる。これが喧伝(けんでん)され,1855年江戸中村座初演の《名高手毬諷実録(なにたかしまりうたじつろく)》をはじめ多くの歌舞伎,講談,浪花節で題材となり,江戸っ子の典型とされた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一心太助」の意味・わかりやすい解説

一心太助
いっしんたすけ

江戸時代初期の江戸の魚屋といわれ,講談,小説,戯曲に登場する人物。歌舞伎では河竹黙阿弥作『芽出柳緑翠松前 (めだしやなぎみどりのまつまえ) 』で活躍。義侠心に富み,江戸っ子の典型。大久保彦左衛門忠教の愛顧を受けたという。東京都港区の立行寺に墓がある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「一心太助」の解説

一心太助 いっしんたすけ

歌舞伎,講談などに登場する江戸の町人。
いなせな魚屋で,腕に「一心白道」の入れ墨をしていることから一心太助とよばれる。天下のご意見番大久保彦左衛門に愛され,彦左衛門をたすけてさまざまな活躍をする。歌舞伎の初演は安政2年江戸中村座の「名高手毬諷(なにたかしまりうた)実録」(3代桜田治助作)。

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デジタル大辞泉プラス 「一心太助」の解説

一心太助

日本のテレビドラマ。放映はフジテレビ系列(1971年10月~1972年3月)。講談や歌舞伎などで古くから人気のキャラクター、江戸の魚屋・一心太助を主人公とする人情ものの時代劇。出演:杉良太郎、音無美紀子、中村竹弥ほか。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「一心太助」の解説

一心太助
(通称)
いっしんたすけ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
花舞台団若曾我 など
初演
安政1.7(江戸・市村座)

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