一献料(読み)いっこんりょう

精選版 日本国語大辞典 「一献料」の意味・読み・例文・類語

いっこん‐りょう ‥レウ【一献料】

〘名〙 酒宴のための費用。酒宴を張ることを名目とする料足中世において、年貢催促などの手数料礼銭などとして贈受されることが多かった。一献
高野山文書‐応永一一年(1404)一一月二七日・学侶評定事書案「依之今度到来南部年貢之内一結、為一献、可真覚房方事」

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改訂新版 世界大百科事典 「一献料」の意味・わかりやすい解説

一献料 (いっこんりょう)

〈一献〉は小酒宴のことであるが,鎌倉中期ごろから訴訟を有利に進めるため,幕府奉行人を招き,酒肴(しゆこう)・一献を勧めることが行われるようになり,室町時代には荘園に対する反(段)銭など諸賦課の免除,訴訟のさいに奉行人や守護・守護代に一献料・酒肴料・礼銭などを贈るのが通例となる。奉行人らもそれを恒常的な収入とした。荘園において,一献料は年貢から半分支出され,百姓が半分負担するのが恒例であった。
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世界大百科事典(旧版)内の一献料の言及

【もてなし】より

… また訴訟にあたって,担当の奉行を招き,饗応し,引出物を贈ることも,前掲の太良荘預所による六波羅探題の奉行のもてなしにみられるように,鎌倉時代後期以降はふつうのことになっていた。当事者はそれによって奉行との人間関係を強め,訴訟を有利に導びこうとしたのであるが,この費用は〈沙汰用途(訴訟費用)〉の一部とされ,やがて室町時代になると,幕府の賦課する段銭(たんせん)の免除などのための訴訟にあたって,荘園支配者が奉行をもてなす費用は一献料(いつこんりよう),酒肴料(しゆこうりよう)といわれ,百姓がその半分を負担するのが慣行化し,奉行もその収入を当然のこととして期待するようになっていく。訴論人の主張の対決よりも,こうしたもてなしによる訴訟の解決方法が一般化した点にも,日本の社会におけるもてなしの慣習の根深さがうかがわれる。…

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