三皇五帝(読み)さんこうごてい(その他表記)Sān huáng Wǔ dì

精選版 日本国語大辞典 「三皇五帝」の意味・読み・例文・類語

さんこう‐ごていサンクヮウ‥【三皇五帝】

  1. 中国古代の伝説上の帝王三皇伏羲(ふっき)女媧(じょか)神農(しんのう)、五帝は黄帝顓頊・帝嚳・帝堯・帝舜(人名・配列に諸説ある)。陰陽五行・天文・道徳思想の所産。三五。→三皇五帝
    1. [初出の実例]「三皇五帝の国をおさめ、四岳八元の民をなづる」(出典:平治物語(1220頃か)上)
    2. [その他の文献]〔周礼‐春官〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「三皇五帝」の意味・わかりやすい解説

三皇五帝 (さんこうごてい)
Sān huáng Wǔ dì

中国古代伝説上の8人の帝王の総称。三皇と五帝に分かれる。戦国時代末に,伝説的な帝王を3人あるいは5人にまとめる考えがあり,天皇地皇人皇(泰皇ともいう)の三皇説があらわれる。これは天・地・人の三才によって考えた人為的抽象的なものである。漢代末になると,燧人,伏羲,神農,女媧などから3人を選んで三皇とする説が行われる。《白虎通》という書物には燧人・伏羲・神農とし,《春秋元命苞》では伏羲・女媧・神農とする。これらの三皇は,半人半獣であり,また女媧のごとく女神も含まれ,医薬漁労,調理などの創始者とされたりしているが,倫理的な徳という点では重視されない。

 これに対して,漢代前半にはすでに五帝という考えがあり,徳に重点がおかれている。例えば《史記》には黄帝・顓頊(せんぎよく)・帝嚳(ていこく)・尭・舜を五帝として,人間の歴史の冒頭に置く。この五帝は徳の有無によって位を譲られ,またその功績も政治的である。三皇を五帝より古い時代として,五帝の前に置いて歴史を構成するようになるのは,三国時代(3世紀)以後のことである。しかし歴史的な物語としてまとめられたのは五帝が早く,漢代前半にまとめられて,夏・殷・周3代の前に置いて,歴史に繰り込まれたのに対し,三皇はそれから残った伝説が,あまり人為を加えられずにまとめられたものである。さきにあげた天皇・地皇・人皇の三皇説は内容もなく,抽象的で,燧人などのほうが古い伝説をよく残している。これら燧人などの説は,正統的な儒家の古典にはほとんど記録されていないが,前漢末になると神秘思想が盛んになり,当時の知識人たちが古い伝説に残る半獣半人の奇怪な神々に関心をもつようになり,董仲舒などの歴史循環論である三統説・三正説にもとづいて3人に整理して考えるようになったものである。五帝の考えには五行説の影響がある。三皇五帝の考えはもちろん歴史的事実ではないが,神話資料の少ない中国にあっては貴重な資料である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「三皇五帝」の意味・わかりやすい解説

三皇五帝【さんこうごてい】

中国古代,伝説上の帝王。三皇にはふつう伏羲(ふくぎ)・神農(しんのう)・女【か】(じょか),女【か】の代りに燧人(すいじん)または祝融(しゅくゆう)があげられるが,天皇・地皇・人皇または泰皇とする説もある。五帝にはふつう黄帝(こうてい)・【せん】【ぎょく】・帝【こく】・(ぎょう)・(しゅん)があげられる。民間に伝わった説話を,戦国末〜漢初に帝王の系譜として整理し,三才五行思想の影響下にまとめたものと思われる。
→関連項目武氏祠

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「三皇五帝」の意味・わかりやすい解説

三皇五帝
さんこうごてい

中国古代の伝説上の帝王。中国最古の王朝である夏(か)王朝の前に、三皇とそれに続く五帝の合計8人の聖王による治世が存在していたと伝えられているが、『史記』が三皇を伏羲(ふくぎ)、女媧(じょか)、神農(しんのう)、あるいは天皇、地皇、人皇とする両説を併載しているように、だれを三皇五帝とするかについてはさまざまな説がある。伏羲は易をつくり、女媧は人類を生み出し、神農は民に農業を教えたとされ、三皇の伝説には神話的色彩が強い。また司馬遷(しばせん)は、五帝に関する記述を『史記』の冒頭に置き、黄帝(こうてい)、顓頊(せんぎょく)、帝嚳(こく)、帝堯(ぎょう)、帝舜(しゅん)の5人の帝について述べているが、それに先行するとされた三皇については疑いを抱いて取り上げていない。

 三皇の記述が『史記』に付け加えられるのは唐代になってからである。このように、中国の古代史は時代が古いところほどあとから積み上げられたものであり、その成立はかえって新しいとされている。これを加上説とよぶが、この考え方に従うと、三皇五帝の時代は中国の古代に実在せず、観念的にあとから夏王朝の前に接ぎ木されたものであることがわかる。三皇五帝がだれであるのか一定していないのも、そのためであると考えられている。

[桐本東太]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 世界史小辞典 改訂新版 「三皇五帝」の解説

三皇五帝(さんこうごてい)

中国古代の伝説上の帝王。三皇はふつう伏羲(ふくぎ),神農(しんのう),燧人(すいじん)(それぞれ漁猟,農耕,火食の発明者)をさし,五帝は『史記』では,黄帝(こうてい),顓頊(せんぎょく)(黄帝の孫,暦法の発明者),帝嚳(ていこく)(黄帝の曾孫,殷(いん)の始祖神),堯(ぎょう)舜(しゅん)をさす。文明の起源,国家・民族の起源をこの8神で説明しようとするもので,戦国,秦漢の時代に系統づけられた。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三皇五帝」の意味・わかりやすい解説

三皇五帝
さんこうごてい
San-huang-wu-di; San-huang-wu-ti

中国古代の伝説上の聖天子8人の総称。三皇は燧人 (すいじん) ,伏羲 (ふくぎ,ふっき) ,神農。あるいは女か (じょか) を数えることもある。別に天皇,地皇,人皇ということもある。五帝は黄帝 (こうてい) ,せんぎょく,帝こく (ていこく) , (ぎょう) , (しゅん) で,ほかに数説がある。三皇五帝説は戦国時代にまとめられたもの。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「三皇五帝」の解説

三皇五帝
さんこうごてい

中国古代の8人の伝説上の帝王
儒学では実在の聖天子と信じた。三皇は秦・漢代に天地人三才の思想から生まれ,通説では伏羲 (ふくぎ) ・神農 (しんのう) ・燧人 (すいじん) (それぞれ漁猟・農耕・火食の発明者)の3人をさす。五帝は戦国時代に五行説から生まれ,『史記』では黄帝・顓頊 (せんぎよく) ・帝嚳 (ていこく) ・堯 (ぎよう) ・舜 (しゆん) をさす。この8神で,文明・国家・民族の起源を説明しようとしている。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android