デジタル大辞泉
「上下」の意味・読み・例文・類語
じょう‐げ〔ジヤウ‐〕【上下】
[名](スル)
1
㋐高い所と低い所。高い方と低い方。「乱気流で機体が上下に揺れる」「棚を上下に仕切る」
㋑あげたりさげたりすること。あがったりさがったりすること。「手旗を上下する」「上下するエレベーターが見えるビル」
2 衣服で、上半身用のものと下半身用のもの。洋服ではスーツ、和服では裃をさすことが多い。「紺の上下にレジメンタルのネクタイ」「上下がちぐはぐな服装」
3 本など、ひとまとまりの内容をもつものを二つに分けた、始めのほうと後のほう。「上下の巻をまとめて買う」
4 地位・身分・年齢などの、上位と下位。また、その人。「上下関係にうるさい職場」「上下の別なくもてなす」
5 数値の高いほうと低いほう。また、数値が高くなったり低くなったりすること。「得点の上下に開きがある」「相場が激しく上下する」
6 川上と川下を行き来すること。のぼりくだり。「利根川を上下する船」
7 鉄道や道路などの、都へ向かう方と都から離れる方。また、それぞれの方向へ行き来すること。のぼりくだり。「東名高速を上下する車」「上下線」
8 行きと帰り。往復。
「一人乗一挺誂らえて来てお呉れ、浜町まで―」〈二葉亭・浮雲〉
9 ことばのやりとり。討論。問答。
「その論を―し給ひ」〈折たく柴の記・下〉
[類語]上げ下げ・上げ下ろし・上がり下がり・上り下り・昇り降り・昇降・アップダウン・振れる・揺れる・揺らぐ・振動する・微動する・ぐらつく・動かす・動く・揺らす・揺する・揺さぶる・揺すぶる・揺り動かす・揺り返す・揺る・揺るがす・揺れ・震動・縦揺れ・横揺れ
かみ‐しも【上下】
1 かみと、しも。うえの部分と、したの部分。身分の上位と下位、川上と川下、上半身と下半身、舞台の上手と下手、上の句と下の句など。
「大井川かはのしがらみ―に千鳥しば鳴く夜ぞふけにける」〈夫木・一七〉
2 いろいろな事。諸事。
「殿の事とり行ふべき―定めおかせ給ふ」〈源・須磨〉
3 衣服のうえと、した。また、それが対をなす衣服。
㋐上代、上着と袴。
「此の嬢子を得ることあらば、―の衣服を避り」〈記・中〉
㋑平安時代から室町時代にかけて、狩衣・水干・直垂・素襖などの上着と袴とが同じ地質と染め色のもの。
「浅黄の―着たる翁の」〈宇治拾遺・一二〉
㋒(「裃」とも書く)江戸時代の武士の礼装・正装。肩衣と、同じ地質と染め色の、わきの広くあいた袴とからなり、紋付きの熨斗目または小袖の上に着る。麻上下を正式とし、長上下と半上下の別がある。のち、半上下は庶民にも公務や冠婚葬祭などには着用が許された。
しょう‐か〔シヤウ‐〕【上下】
[名](スル)
1 うえとした。じょうげ。
2 身分の高い人と低い人。統治者と人民。
「尚―長少の義理人情を重んじ」〈福沢・福翁百話〉
3 あがることとさがること。あがりさがり。あげさげ。
「結論の価値を―しやすい思索家」〈漱石・三四郎〉
4 意見や言葉をやりとりすること。
「彼は倦まずに其等の人と議論を―した」〈虚子・柿二つ〉
じょう‐か〔ジヤウ‐〕【上下】
1 上と下。また、上級と下級。じょうげ。
2 二院制議会で、上院と下院。「上下両院」
かる‐める【▽上▽下/▽甲▽乙】
邦楽で、高い調子の「かる」と低い調子の「める」。かりめり。めりかり。
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じょう‐げジャウ‥【上下】
- 〘 名詞 〙 ( 「じょう」「げ」はそれぞれ「上」「下」の呉音 )
- [ 一 ] 垂直的な空間の位置で、高いほうと低いほう。
- ① 位置の高いほうと低いほう。かみとしも。また、上から下まで。
- [初出の実例]「上下四方種々光明照し耀けり」(出典:栄花物語(1028‐92頃)音楽)
- [その他の文献]〔周礼‐春官・卜師〕
- ② 掛物の表具で、上と下との切れ地。掛物の天地。
- [初出の実例]「きゃふを上下帯を中べりにして、姿絵の懸物其かぎりなく」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)六)
- ③ 衣服で上衣と下衣が対になったもの。肩衣(かたぎぬ)と袴とを同色に染めたもの。かみしも。現代では、上衣とズボン(またはスカート)で一そろいになっている服。
- [初出の実例]「上下(ジャウゲ)大小といへば、武家仮初の礼服、劔佩の儀表調へり」(出典:随筆・東牖子(1803)二)
- 「三越に出かけて、既製服の背広上下を買った」(出典:徳山道助の帰郷(1967)〈柏原兵三〉一)
- ④ 本などを二つに分けたときの、始めの方と後の方。二巻に分かれている本の上巻と下巻。
- [初出の実例]「『浪化集(らうくゎしふ)』の時、上下を有磯海(ありそうみ)・となみ山と号す」(出典:俳諧・去来抄(1702‐04)故実)
- ⑤ ( ━する ) あげたりさげたりすること。あげさげ。また、あがったりさがったりすること。あがりさがり。
- [初出の実例]「坂は上下する処のあるを云ぞ」(出典:日本書紀兼倶抄(1481)上)
- 「三尺の童子も吾輩を自由に上下し得るであらうが」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉四)
- [ 二 ] 水平的な空間の中に認められる、高い方と低い方。
- ① 都からの遠近(近が上)。都の中の南北(北が上)。
- [初出の実例]「下毛野国造 難波高津朝御世。元毛野国分為二上下一」(出典:先代旧事本紀(806‐936頃)一〇)
- ② ( ━する ) 川上と川下の間を往復したり、行き来したりすること。また、人や車などが都市と地方、または都と地方とをむすぶ道を往復したり、行き来したりすること。あるいは、それをする旅人や飛脚など。
- [初出の実例]「上下(ジャウゲ)〈高良本ルビ〉往来の船のわづらひなきこそ目出(めでた)けれ」(出典:平家物語(13C前)六)
- 「此街道では上下のものや供のものへは飯を山もりにして出すといふことだ」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)五)
- [ 三 ] 順序や序列を含むものの先のものと後のもの。
- ① 位や官職の上の者と下の者、また、身分の高い人と低い人を合わせたすべての人びと。
- [初出の実例]「上下、多の人の頸を切り捨てつ」(出典:今昔物語集(1120頃か)四)
- [その他の文献]〔易経‐序卦〕
- ② 君主と臣下。主人と家来。主従。
- [初出の実例]「損益之大旨、用レ之則上下和穆、捨レ之則貴践崩離」(出典:経国集(827)二〇・大日奉首名対策文)
- 「桂新左エ門といふ者あり〈略〉総領の浅太郎をともなひ上下四五人にて伊豆のいで湯へくだりける」(出典:黄表紙・敵討義女英(1795)上)
- [その他の文献]〔礼記‐曲礼上〕
- ③ 年長者と年少者。長幼。
- [初出の実例]「兄弟の上下の次第无して理を失へりしが故に」(出典:今昔物語集(1120頃か)二〇)
- [その他の文献]〔呂氏春秋‐論威〕
- ④ ある数値の上と下。また、その間をあがったりさがったりすること。
- [初出の実例]「東京全市の亡霊、十万を上下する迷へる魂が」(出典:東京灰燼記(1923)〈大曲駒村〉自序)
- [ 四 ] ( ━する ) ことばのやりとりをすること。問答すること。討論すること。
- [初出の実例]「たやすく心に得らるまじき事共をば、幾度も詮房朝臣して、其論を上下し給ひ」(出典:随筆・折たく柴の記(1716頃)下)
- [ 五 ] 年齢に付けて、その前後の年頃であることを示す。前後。
- [初出の実例]「一女子、年紀廿上下、顔色も亦七八分」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)四)
かみ‐しも【上下・裃】
- 〘 名詞 〙
- [ 一 ] 方向や人間関係のうえとした。
- ① うえとした。うえからしたまで。
- [初出の実例]「手はさすがに文字つよう、中さだのすぢにてかみしもひとしくかい給へり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)
- ② 川上と川下。また、上(かみ)、中(なか)、下(しも)などと分けて呼ばれる地域で、その上と下をいう。
- [初出の実例]「大井川心しがらみかみしもにちどりしば鳴夜ぞふけにける」(出典:古今和歌六帖(976‐987頃)三)
- ③ 歌舞伎舞台などでの上手(かみて)(=向かって舞台の右手)と下手(しもて)(=左手)。また、それになぞらえて、一般に右の方と左の方。
- [初出の実例]「上下、梅の立樹、日覆より紅白梅の釣枝、すべて鹿島の社の体」(出典:歌舞伎・暫(1714))
- ④ 上位の者と下位の者。
- [初出の実例]「ありとあるかみしも、童まで酔ひ痴れて」(出典:土左日記(935頃)承平四年一二月二四日)
- ⑤ いろいろな事。諸事。
- [初出の実例]「親しう仕まつり世に靡かぬ限りの人々、殿の事取り行ふべきかみしもさだめをかせ給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)須磨)
- ⑥ 北(かみ)と南(しも)。また、特に京都の北部(上京)と南部(下京)。
- [初出の実例]「京極とをりの在家人等をめされてのたまひけるは、勿論かみしも屋並とりつづきては見ゆれども」(出典:室町殿日記(1602頃)一〇)
- ⑦ 京と田舎。
- ⑧ 身体の、腰より上と、下。「あんまかみしも二百文」などという。
- ⑨ 和歌の、初めの三句と末の二句。上句と下句。
- [初出の実例]「左、上下相応してをかしくみえ侍り」(出典:六百番歌合(1193頃)夏下・四番)
- ⑩ 一か月の、一五日以前と一六日以後。また、会計年度などの上期と下期。
- [ 二 ] 上下の衣服の意。後には「裃」の字もあてる。
- ① ( 上代で ) 衣(きぬ)と裳(も)。上衣と袴。衣装。
- [初出の実例]「若し汝、此の嬢子を得ること有らば、上下(かみしも)の衣服を避り、身の高を量りて甕酒を醸み」(出典:古事記(712)中)
- ② 上着と袴とが同じ地質、色目、文様からなる水干、直垂(ひたたれ)の類をいう。
- [初出の実例]「わが装束(さうぞく)、かみしも・帯・太刀までみな誦経にしけり」(出典:大和物語(947‐957頃)一六八)
- 「著二紺直垂上下一之男」(出典:吾妻鏡‐治承四年(1180)一一月八日)
- ③ 江戸時代の武士の式服。同じ地質、文様、色目からなる肩衣と袴の略称。長袴による長上下(ながかみしも)、切袴による半上下(はんかみしも)などがある。上下の地質、色目、文様の別なのを継上下(つぎかみしも)という。
- [初出の実例]「当世は、はやし衆、色々大がらなる紋を付、上下きるゆへ、太夫、脇、狂言にきるべき物なし」(出典:わらんべ草(1660)一)
- ④ 堅苦しいことのたとえ。→上下(かみしも)を着る。
- ⑤ ( 「かみしも」を着けて来るので ) 「いせ(伊勢)の御師(おし)」の異称。
- [初出の実例]「大紋は笑顔上下(かみしも)泣っつら」(出典:雑俳・柳多留‐一七(1782))
あげ‐さげ【上下】
- 〘 名詞 〙
- ① 上げることと下げること。高くしたり低くしたりすること。
- (イ) 物の位置を上げたり下げたりすること。
- [初出の実例]「首をあげさげしたなりぞ」(出典:玉塵抄(1563)一九)
- (ロ) 音声を高くしたり、低くしたりすること。とくに謡曲では、低音部から一音高い部分に上げることと高音部から一音低い部分に下げることにいう。〔申楽談儀(1430)〕
- (ハ) 物価を上げることと下げること。
- [初出の実例]「何あれは米のあげさげだ」(出典:洒落本・志羅川夜船(1789)西岸世界)
- ② あれこれ操作して物事の処理をすること。
- (イ) やりくりして事をはこぶこと。仕事や生活などのやりくりや始末をつけること。
- [初出の実例]「こっちの上(ア)げ下(サ)げさへてんやわやと来て居るものを」(出典:黄表紙・桃太郎発端話説(1792))
- (ロ) 質入れをして金銭の都合をつけること。質物の出し入れをすること。
- [初出の実例]「例の七つ屋から拝むやうにして上げ下げしたのだやらしれず」(出典:洒落本・深彌満於路志(1782))
- (ハ) ほめたり、けなしたりすること。
- [初出の実例]「おらは只の大黒ではない。しろかね様だは。おのしらにあげさげをされるものけい」(出典:咄本・聞上手三篇(1773)銀の大黒)
- ③ 膳などを出したり、とりかたづけたりすること。
- [初出の実例]「何も彼も一人でした。客膳の上(ア)げ下(サ)げもした」(出典:続俳諧師(1909)〈高浜虚子〉三五)
- ④ 潮が満ちることと引くこと。
うえ‐したうへ‥【上下】
- 〘 名詞 〙
- [ 一 ] 位置、程度、数量などの上下。
- ① 場所、位置の上の方と下の方。
- [初出の実例]「照る月の流るる水し清ければうへした秋のもみぢをぞ見る」(出典:頼基集(11C初か))
- ② 身分の上の者と下の者。うえしも。
- [初出の実例]「Vye(ウエ) xitamo(シタモ) ナウ アソビ タワムレ マラシテ」(出典:天草本平家(1592)四)
- ③ 洋服で上半身に付けるものと下半身に付けるもの。背広の上下など。
- [ 二 ] 表面と、その下にあるものごと。
- ① 上着と下着。
- [初出の実例]「重ねたりつる 衣手は うへした分かず くたしてき」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
- ② うわべと胸中。
- [初出の実例]「霜こほり冬の川瀬にぬるをしのうへした物を思はずもがな」(出典:相模集(1061頃か))
- [ 三 ] 上と下とさかさまの状態。「うえしたにする(なる)」などと用いる。
- [初出の実例]「最前の句をうへ下へないた物でござる」(出典:虎明本狂言・富士松(室町末‐近世初))
あがり‐さがり【上下】
- 〘 名詞 〙
- ① (場所、地位などが)上がることと下がること。また、上がったり下がったりすること。
- [初出の実例]「いらざる太夫になりしよとはぢしめられ、程なくもとの天神となりき。まもなくあがりさがりする女郎を」(出典:評判記・色道大鏡(1678)三)
- ② (音、値段、価値などが)高いことと低いこと。また、高くなったり低くなったりすること。
- [初出の実例]「いはゆる六時堂の前の鐘なり。その声、〈略〉寒暑に随ひてあがりさがりあるべき故に」(出典:徒然草(1331頃)二二〇)
- ③ 京都、または近畿地方への行き帰り。
- [初出の実例]「御腹が段々かさ高になり、揚(アガ)り下(サガ)りの道中に、人目の関守つつましく」(出典:浮世草子・元祿大平記(1702)四)
- ④ (気分、調子などが)よくなることと悪くなること。また、よくなったり悪くなったりすること。
- [初出の実例]「健三の気分にも上(アガ)り下(サガ)りがあった」(出典:道草(1915)〈夏目漱石〉五四)
しょう‐かシャウ‥【上下】
- 〘 名詞 〙 ( 「しょう」「か」はそれぞれ「上」「下」の漢音 )
- ① うえとした。〔文明本節用集(室町中)〕
- ② かみとしも。身分の高い人と低い人。為政者と人民。
- [初出の実例]「上下心を一にして、盛に経綸を行ふべし」(出典:五箇条の御誓文‐明治元年(1868)三月一四日)
- 「詰る所は、上下(ショウカ)相和して楽しむ様なればよいので」(出典:文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉二)
- ③ ( ━する ) あがったりさがったりすること。また、あげたりさげたりすること。
- [初出の実例]「結論の価値を上下(シャウカ)しやすい思索家自身から見ると」(出典:三四郎(1908)〈夏目漱石〉四)
- ④ ( ━する ) ことばや意見などをやりとりすること。
- [初出の実例]「相手と議論を上下(シャウカ)して」(出典:それから(1909)〈夏目漱石〉六)
じょう‐かジャウ‥【上下】
- 〘 名詞 〙
- ① 身分の高い人と低い人。また、上級と下級。じょうげ。しょうか。
- [初出の実例]「最初は学校も上下(ジャウカ)各々十級に分れていたのが」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉一)
- ② 議会の上院と下院。
- [初出の実例]「上下(ジャウカ)両院の中に於て最も多識なるは誰ぞやと問はんに」(出典:春迺屋漫筆(1891)〈坪内逍遙〉政界叢話)
- ③ ( ━する ) あがったりさがったりすること。じょうげ。しょうか。
- [初出の実例]「此に由(より)て水中を上下(ジャウカ)するに」(出典:造化妙々奇談(1879‐80)〈宮崎柳条〉一二)
- 「山坂を上下(ジャウカ)するもの多く此の処に休憩す」(出典:雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉下)
のぼり‐くだり【上下】
- 〘 名詞 〙 のぼることとくだること。のぼったりくだったりすること。昇降。また、街道を往来すること。のぼりおり。
- [初出の実例]「答へぬにな呼び響(とよ)めそ呼子鳥佐保の山辺を上下(のぼりくだり)に」(出典:万葉集(8C後)一〇・一八二八)
- 「神がみとのぼりくだりはわぶれどもまださかゆかぬこころこそすれ」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
あがり‐おり【上下】
- 〘 名詞 〙 上がることと下りること。上がったり下りたりすること。
- [初出の実例]「二階には、久都(ひさいち)はしのごの上(アガ)り下(オリ)まで吟味しをるこそ憎し」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)七)
あげ‐くだし【上下】
- 〘 名詞 〙 腹の中のものを吐いたりくだしたりすること。吐きくだし。吐瀉(としゃ)。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
上・下
かみなだ・しもなだ
江戸時代からみえる海部郡の広域通称名。現由岐町・日和佐町・牟岐町にわたる郡北東部の一帯を上灘と称し、現海南町・海部町・宍喰町にわたる郡南西部の一帯を下灘という。海岸部は室戸阿南海岸国定公園のうちで、日和佐町の千羽海岸をはじめ海部山地が太平洋に沈む雄大な断層海岸を呈しており、牟岐町から海南町にかけては八坂八浜が連なる。八坂八浜の南方もまた浅川湾・大里砂丘・那佐湾・水床湾など風光明媚な景観に恵まれる。海部郡は古代・中世を通じて海産物の貢進や材木の回漕など海にかかわる活動が知られ、あるいは地震に伴う津波による被害など、灘と称するのは当郡らしいが、その呼称が確認できるのは近世からである。
海岸部を含む郡域は慶長年間(一五九六―一六一五)のものと推定される国絵図、寛永(一六二四―四四)前期のものと推定される国絵図や正保国絵図などがあり、入海や浦口の規模や係留の便不便などを記すものもみられる。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
上下
じょうげ
広島県東部、甲奴郡(こうぬぐん)にあった旧町名(上下町(ちょう))。現在は府中市(ふちゅうし)上下町地区。1897年(明治30)町制施行。1954年(昭和29)矢野、清岳(きよたけ)、階見、吉野の4村と合併。その後、2004年(平成16)府中市に編入。旧上下町は、吉備(きび)高原上にあり、瀬戸内海へ注ぐ芦田(あしだ)川と、日本海へ注ぐ江の川(ごうのかわ)の支流上下川の分水界にあたる。JR福塩(ふくえん)線、国道432号が通じる。中心地区の上下は江戸中期には天領で代官所が置かれた。南西部の矢野にはラジウム泉で知られる矢野温泉がある。「久井(くい)・矢野の岩海(がんかい)」は周氷河期地形で国指定天然記念物。「上下の弓神楽(ゆみかぐら)」は県指定無形民俗文化財。
[北川建次]
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上下
じょうげ
広島県東部,府中市北部を占め,吉備高原にある地区。旧町名。 1897年町制。 1954年矢野,清岳,吉野の3村および階見 (しなみ) 村の一部と合体。 2004年4月府中市に編入。瀬戸内海側斜面の芦田川水系と日本海側斜面の江 (ごう) 川水系の分水界に位置する。中心集落の上下は元禄年間 (1688~1704) 天領となり代官所が置かれ,尾道と三次を結ぶ街道の宿場町でもあった。周辺の高原ではコンニャクイモなどが栽培され,谷間では米作を主とする。矢野温泉があり,矢野の岩海は国の天然記念物。 JR福塩線,国道 432号線が通る。
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上下
かみしも
裃とも。江戸時代の武士の正装。袖なしの上衣である肩衣(かたぎぬ)と下衣の袴(はかま)からなり,小袖の上に着用する。本来は鎌倉時代以来の武家社会で,直垂(ひたたれ)・大紋(だいもん)・素襖(すおう)などの上衣と下衣(袴)を共布で作ったものが正式。室町中期頃から,その袖を外した肩衣が着られはじめ,末期には肩衣袴として直垂系の衣服にかわって正装となった。江戸時代に入ると肩幅をピンと張らせたり,襞(ひだ)のたたみ方を工夫するなど公服としての威儀を整え,「裃」と書くようになった。最も正式な場には長上下,通常は半上下を用い,略装に継上下がある。武家の公服としては,幕末の一時期,羽織袴になったがすぐ復活,明治維新まで続いた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
上下[町]【じょうげ】
広島県東部,甲奴(こうぬ)郡の旧町。江の川(ごうのかわ)の支流上下川と芦田川の支流矢多田川の分水界にあたる。福塩線の通じる中心集落は上下川流域にあり,かつて宿場町,天領の商業中心として栄えた。米,コンニャクを産し,酪農も盛ん。2004年4月府中市に編入。85.53km2。6083人(2003)。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
上下
かみしも
安土桃山時代以来の略礼服
「裃」とも書く。武家・民間で着用。肩衣 (かたぎぬ) と袴 (はかま) 。室町時代の身分の低い武士の大礼服素襖袴 (すおうばかま) の袖を略し,袴を細くしたもの。江戸幕府では直垂 (ひたたれ) ・狩衣 (かりぎぬ) ・大紋 (だいもん) ・素襖が大礼服で,肩衣袴すなわち上下は中礼服であった。長袴を正式,半袴を略式とした。
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
普及版 字通
「上下」の読み・字形・画数・意味
【上下】じよう(じやう)げ・しよう(しやう)か
上と下。天地。長幼。尊卑。〔礼記、曲礼上〕君臣上下、子兄弟は、禮に非ざれば定まらず。字通「上」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の上下の言及
【飛脚】より
…人足としての飛脚は,最近まで大阪の私鉄沿線で客の依頼により品物を購入して運ぶ飛脚屋として残っていた。なお近世には人足としての飛脚を上下(じようげ)と称することがある。【藤村 潤一郎】
[古代,中世]
飛脚の語は,だいたい平安時代の末ごろから現れ,中世以降頻出する。…
※「上下」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」