デジタル大辞泉 「不随意運動」の意味・読み・例文・類語
ふずいい‐うんどう【不随意運動】
2 意志とは無関係に生じる不合理な動作・運動のこと。振戦(ふるえ)、ジストニア(筋緊張異常による異常姿勢)、バリスムス(上下肢全体の振り回し運動)、アテトーシス(手足、頭などの緩慢な旋回運動)、ミオクローヌス(
自分の意思とは関係なく現れる異常運動のことを不随意運動といいますが、専門的には性状によって分類されています。
原因はさまざまなので、不随意運動がみられるようなら専門医(神経内科など)を受診するのがよいでしょう。以下、主なものについて解説します。
①
振戦(震え)とは、律動的に細かく振動するような運動をいい、安静時にみられる振戦はパーキンソン病に特徴的です。一方、字を書いたり、物を持ったりするときにみられる振戦(
軽症では治療を必要としませんが、日常生活に支障が出るほどの時には、アロチノロール(アルマール)やクロナゼパム(リボトリール)の投与で振戦を軽くすることができます。時に飲酒で軽くなる人もみられます。
②バリスムス
上下肢全体を投げ出すような、または振り回すような大きく激しい不随意運動です。バリスムスは、視床下核の脳梗塞や脳出血による障害で反対側の上下肢に起こるものがほとんどです。
この場合は、自然に消える場合がほとんどですが、ハロペリドール(セレネース)の投与が比較的有効です。
③アテトーゼ
手足や頭をゆっくりとくねらせるような動きをする不随意運動です。
④ジストニア
ジストニアとは、筋肉の緊張の異常によって異常な姿勢、肢位をとるものをいいます。
アテトーゼと同様に代謝異常でみられることもありますが、それ以外に、パーキンソン病治療薬や抗精神病薬の副作用でみられることもあります。トリヘキシフェニジル(アーテン)などで効果があります。
⑤ミオクローヌス
ミオクローヌスは、手足、全身のビクッとする素早い動きのことで、健康な人でも入眠時にみられることがあります。代謝異常でみられることが多いのですが、まれな病気で、
ミオクローヌスの治療は、代謝異常では原疾患の治療でよくなりますが、クロナゼパム(リボトリール)が有効です。
⑥
口をもぐもぐさせたり、舌をペチャペチャさせるような不随意運動です。パーキンソン病治療薬や抗精神病薬の副作用で起こることがあります。
小山 主夫, 黒岩 義之
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
意志,意図と無関係に出現する異常運動をいう。一般に錐体外路症状といわれるものの主体をなすもので,これには振戦(震え),舞踏病,アテトーシス,バリスム,ジストニー,ミオクローヌス,チック,痙性斜頸等がある。しかし,これらの異常運動は一般に意図的運動を行う際には強くなるのが特徴で,このため意図性振戦,意図性ミオクローヌス等,静止時に出現せず運動時にのみ出現する異常運動も含めて考えられている。これらの不随意運動はしばしばいくつかの複合型として出現することが多く(たとえば舞踏病様アテトーシス),単純に分類できないことがある。それぞれの異常運動の病巣は,大脳基底核から中脳までの広い範囲にわたっており,一応の対応は想定されているが(たとえば,上肢をはげしく投げ出すなどの不随意運動であるバリスムスは視床下核の障害による),その発現機序,中枢の伝導路等に関しては不明の点が多い。難治であるものが多いが,自然に治癒することや,薬物・手術療法もありうる。なお,意志や意図にもとづいて行われる正常な運動を随意運動という。
→運動
執筆者:大江 千広
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
自分の意志とは無関係に生ずる無目的な異常な運動をいい、主として大脳基底核、脳幹、小脳などを侵す疾患の際みられる。すなわち、無意識の運動をつかさどる錐体(すいたい)外路系のどこかの障害によって引き起こされる。不随意運動には、律動的なもの、運動の速度が速いものや遅いもの、画一的な運動が繰り返されるものや不規則な運動が雑然と連続しておこるもの、ごく一部(顔面、四肢、躯幹(くかん)など)に生ずるものから全身に及ぶものなど、さまざまなパターンがあり、振戦(比較的リズミカルな無目的の運動が、一部の筋や身体の一部、ときに全身に現れる)、舞踏病様運動、アテトーシス(おもに四肢や顔面におこるややゆっくりした不随意運動)、バリスム(舞踏病より激しい腕や手の不随意運動)、ジストニー(頸(けい)部や躯幹に目だつ骨格筋の異常な持続性収縮によって生ずる非対称性の奇妙な姿勢をとる)、チック(顔面・頸部・肩などの筋が急激で律動的に反復する不随意運動)、ジスキネジー(胆道ジスキネジーに代表される目的に合致しない病的運動)などに分けられる。
[海老原進一郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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