裁判等において,第三者が紛争事件につき判断をするためには,紛争当事者からそれぞれの言い分をきくことが必要なことであるし,また妥当なことでもある。この〈それぞれの言い分をきく〉ことを訴訟当事者側から表現すれば,〈主張する〉ということになる。このように当事者が申立てを基礎づけるために行う訴訟行為を,主張という。主張は陳述ともいわれ,法律上の主張と事実上の主張に大別される。前者は特定の権利または法律関係に関する自己の認識または判断を報告する陳述をいう。とくに訴訟物に関する原告の主張は請求といわれる。後者は法律上の主張を基礎づける具体的な事実を裁判所に報告する陳述をいう。後者のうち要件事実(主要事実)の主張については,弁論主義の妥当する領域の民事訴訟のもとでは,当事者から〈主張〉として行われなければ裁判の基礎にすることができない(主張責任)。事実上の主張に対応する相手方の態度は,否認,不知,自白,沈黙のいずれかである。
執筆者:納谷 廣美
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