暦の雑節の一つ。立春から数えて210日目の日。太陽暦の9月1日ごろにあたる。古来、台風襲来の時期でイネの開花期にあたり、農家の厄日として注意を促すため暦に記載される。渋川春海(しぶかわはるみ)が漁夫からこのことを聞いて1686年(貞享3)の暦から記載するようになったといわれているが、それ以前に伊勢(いせ)暦には1656年(明暦2)の暦から記載されている。立春から数えて220日目を二百二十日(にひゃくはつか)というが、暦には記載されない。
[渡辺敏夫]
農家では台風による風水害に注意するが、統計的にはこの日がとくに台風が来襲しやすい特異日ではない。近年、気候の変動により、本土に影響する台風は二百十日以前のほうが多くなっていることは注意すべきことである。二百十日のさらに古い記載は、1634年(寛永11)に安田茂兵衛尉重次(もへいのじょうしげつぐ)が著した『全流舟軍之巻』のなかで述べられたものがあり、そこには「野分と云(い)ふ風の事。是(これ)は二百十日前後七日の内に吹くもの也(なり)」とある。この記載はおそらく倭寇(わこう)などの影響のもと、中国でいわれていた105日の風雨の厄日を、ちょうど2倍にして考えたものではないかといわれている。俳諧(はいかい)では秋の季語である。
[根本順吉]
暦の雑節の一つ。立春の日から数えて210日目の日。9月1日ごろになる。220日目の二百二十日とともに,台風が来襲する厄日とされ,この日を中心にして風の害を防ぐための風祭(かざまつり)を行う風習があった。古来,稲の穂ばらみ期であるので,暴風を警戒したといわれる。八朔(はつさく)(旧暦8月1日)も同じ時期にあたり,二百十日の厄日にそなえて,八朔の日に風祭をすると伝えていた土地もある。二百十日,二百二十日が暦注に現れるのは新しく,江戸時代初期以後である。二百十日は,立春を元日として,1ヵ月30日計算で,満7ヵ月後になる。二百十日は,年ごとにずれる八朔の日を太陽暦で押さえるために生まれた,生産暦の節日であろう。
→風祭
執筆者:小島 瓔禮
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