日本大百科全書(ニッポニカ) 「井原(市)」の意味・わかりやすい解説
井原(市)
いばら
岡山県南西部にある市。1953年(昭和28)井原、高屋(たかや)、西江原の3町と県主(あがたぬし)、木之子(きのこ)、荏原(えばら)、山野上、青野、大江、稲倉の7村が合併して市制施行。2005年(平成17)美星(びせい)、芳井(よしい)の2町を編入。主要部分は高梁(たかはし)川支流の小田川の流域で、谷底に水田が開け、南部は丘陵で、北部は吉備(きび)高原の南部にあたる。福山から高梁に抜ける国道313号、市の南部を横断する486号と、井原鉄道が通じる(1999年開業)。『和名抄(わみょうしょう)』に荏原など5駅名がみえ、中世には井原荘(しょう)、荏原荘が置かれ、近世には山陽道の七日市宿、高屋宿があった。近世にワタ、アイの栽培により織物業がおこった。明治以後、多くの中小企業が白ネル、小倉(こくら)服地、デニムなどの布地や各種の製品をつくってきたが、第二次世界大戦後にデニム・ブームが生じるとこれに集中し、全国のデニム生地の大部分を生産、ピーク時の1970年ころには年間1500万本(国内の75%)を生産した。その後生産量は減少したものの、その品質の高さが認められ、欧米を中心に多く輸出されている。1995年には井笠地方拠点都市地域に指定されている。北部の美星町地区では園芸や畜産が盛ん。また、芳井町地区では石灰石採掘が行われている。市出身の彫刻家平櫛田中(ひらくしでんちゅう)を記念する市立田中美術館がある。面積は243.54平方キロメートル、人口3万8384(2020)。
[由比浜省吾]
『『井原市史』(1964・井原市)』▽『『井原市史』全6巻(2001~2005・井原市)』