デジタル大辞泉
「会釈」の意味・読み・例文・類語
え‐しゃく〔ヱ‐〕【会釈】
[名](スル)《もと仏教語で、混乱した内容を、前後照合して意味が通じるようにする意の「和会通釈」の略》
1 軽くあいさつや礼を交わすこと。また、そのあいさつや礼を示す所作。「会釈してすれ違う」「会釈を返す」
2 相手に心配りをすること。思いやり。斟酌。「遠慮会釈もなく割り込む」
「一国独立の為とあれば試みにも政府を倒すに―はあるまい」〈福沢・福翁自伝〉
3 事情を納得して理解すること。趣旨をのみこむこと。
「之を尺度として、―もなく百般の著述を批評するをいうなり」〈逍遥・批評の標準〉
4 事情を説明したりすること。
「入道朝家を恨み奉る由聞こえしかども、静憲法印院宣の御使ひにて様々―申しければ」〈盛衰記・一二〉
5 (多く、あとに「こぼる」「こぼす」などを伴って用いる)打ち解けて愛敬のあること。また、その所作。
「―こぼして、御機嫌取りの追従顔」〈浄・振袖始〉
[類語]お辞儀・礼・目礼・黙礼・最敬礼・叩頭・一礼・敬礼・答礼・握手・一揖・叩首・低頭・拝礼
あしらい〔あしらひ〕
1 応対すること。あつかい。もてなし。「ひどいあしらいを受けた」
2 組み合わせて趣を添えること。また、そのもの。取り合わせ。「あしらいにパセリを添える」
3 (「会釈」とも書く)芸能の型。また、手法。
㋐能で、相手役に向き直って応対する型。
㋑能の囃子の一。
㋒狂言に奏する囃子。狂言アシライ。
㋓長唄で、間拍子に合わせて、自由な形で即興演奏する手法。
4 連句の付合手法の一。前句の事物を取り入れた付け方。→七名八体
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
え‐しゃく ヱ‥【会釈】
〘名〙
① (━する) (「和会
(わえ)通釈」の意) 仏語。
一見矛盾しているように思われる異義、
異説の相違点を掘り下げて、その根本にある、実は矛盾しない真実の意味を明らかにすること。会通
(えつう)。和会。融会
(ゆうえ)。
※真如観(鎌倉初)「凡そ諸経論の文は、人の信により、意楽(いげふ)によって、様々の会釈(ヱシャク)をのぶる者也」
② (━する) 転じて、あれこれ思い合わせて、納得できるような
解釈を加えること。
※令集解(868)公式「義云。〈略〉未レ知、与二此条一若為会釈」
※
無名抄(1211頃)「予こころみにこれを会尺す」
③ (━する) 一方的でなくいろいろな方面に気を配ること。あれこれの事情を考慮に入れること。配慮。
斟酌(しんしゃく)。思いやり。心づかい。
※浜松中納言(11C中)一「人の心情けなくゑしゃく少なきところも、かかる世界におはせんも恐ろしう」
④ (━する) あれこれとやむを得ない事情を説明すること。言いわけ。申し開き。
※
愚管抄(1220)六「又一定
(いちじょう)をとはんをりは、両方に会尺
(ゑしゃく)をまうくる由の案どもにて」
※源平盛衰記(14C前)一二「静憲法印院宣の御使にて様々会釈(エシャク)申しければ」
⑤ (━する)
儀礼にかなった応対。儀礼的な
口上を述べること。あいさつ。
※
殿暦‐承徳元年(1097)二月三日「申時許、芟
二姫君御髪
一〈略〉別当息少将実隆・兵衛佐実行等相伴、同申
レ慶、相逢言談、為
二会釈
一也」
※宇治拾遺(1221頃)一一「
大矢の左衛門尉致経、あまたの兵
(つはもの)を具してあへり。国司会尺する間致経がいはく」
⑥ あいさつ料。礼銭。
※本福寺跡書(1560頃)「この二色を堅田新在家御坊御建立の御会釈に召されつけたり」
⑦
好意を示す応対、態度。
愛想。「えしゃくこぼす(=愛敬ある様子をする)」「えしゃくこぼる(=愛敬が顔に現われる)」
※
日葡辞書(1603‐04)「Yexacuno
(エシャクノ) ヨイ ヒト」
⑧ (━する) ちょっと頭を下げて礼をすること。軽いお辞儀。一礼。えさく。
※浄瑠璃・
仮名手本忠臣蔵(1748)四「役目なれば罷通ると、会釈
(ヱシャク)もなく上座に着ば」
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)四「藤兵衛が彼(かの)侍に会釈(ヱシャク)すれば、本田の次郎も打うなづき」
え‐さく ヱ‥【会釈】
※宇津保(970‐999頃)吹上上「わが君のおほんえさくのすぢ侍らば、やすくしおもひいたること」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報