(1)環形動物,節足動物または脊椎動物の発生期に見るように,同じ器官が反復して前後の方向に配列し,体をそれに応じた基本的構造に分けている場合,そのおのおのを体節segmentという。ことに環形動物や節足動物ではそれが輪状の環をなしているので環節という。ところで体節をこのように〈同種の器官をそなえて前後の方向に反復する同じ構造の体の一部〉と定義すると,サナダムシやある種の腔腸動物の繁殖時におけるストロビラstrobila(横分体)もまた同型の多くの節からできている。しかしその節の起原はまったく違った性質のもので,いわば後者の分節は縦の方向に無性分殖をした虫体が,母体から離れないでいつまでも元の個体の一部分としてとどまり,その連絡位置で前のものは尾を,後のものは頭を失った姿と見ることができよう。それに対して真の体節は,いちじるしく伸長した動物体が蠕動(ぜんどう)運動に必要な規則正しい律動に基づいて,体を小範囲すなわち節にくぎって運動することを可能にするという機能を本来備えたものである。したがって最初は各体節間にほとんど差というものがない。これを体節の同規性といって,下等な環形動物に見ることができる。
節足動物や脊椎動物では体のところどころに体節の癒着や癒合がおこり,またある体節ではある種の器官がなくなって形や構造に変化をきたし,いろいろと節間に違いを生じている。それで環形動物の体節の同規的であるのに対して,このようなものを異規体節と呼んでいる。
節足動物の分節では,各体節に1対の付属肢のあるのが原則である。しかるに倍脚類と称するヤスデの類の胴節では,それが2対ある。これはいうまでもなく,この部分では隣接する二つの体節の間で癒合がおこった結果であって,その証拠にこれらのいわゆる複合節には気門が2対,腹神経節が2個ある。またその変化の途中の有様を近縁の少脚類に見ることができる。ただし体節の癒合がこのように体の全長にわたってしかも均等に行われることはむしろまれで,より一般的には頭部とか胸部などの特定区域にかぎられている。なお体節の異規性は決して無秩序に行われるものでなく,また体節数にしても発達程度の低い動物では数も多くかつ不定のものが多いが,すすんだ種類では一般に減少に伴って数が一定してくる。例えば高等な甲殻類である軟甲類においては,下等なコノハエビ類の1目を除いてすべて体節数は頭節5,胸節8,腹節7,計20となっており,昆虫類においても体節の数は頭部4,胸部3,腹部がほぼ10と決まっている。そしてそれらはその場所の特殊分化に深い関係をもって癒着や癒合をおこしている。一般に頭部ではすべての節が癒合して付属肢は触角と口器をなしているが,胸節は昆虫ではおのおのが独立し,甲殻類ではそのいくつかが頭部に癒合していわゆる頭殻,すなわち頭胸部を形成している。脊椎動物の頭も分節の前端ほぼ10節が癒合してできると考えられている。それに対して尾部では新節の形成が続けられているかぎり,著しい分化はおこらないが,節の形成が発生の早期に停止するような種類では,ここにもいろいろな変化が見られる。それにしても尾端分化の一般的な傾向としては,しばしば著しい節の減少や退化が現れる。その極端な例として,節足動物では蔓脚(まんきやく)類や皆脚類などは腹節を完全に失って頭と胸だけの動物となっている。脊椎動物においても鳥類では尾は著しく萎縮し,無尾両生類やヒトでは事実上なくなってしまっている。
なお体節の異規性に関連して一言しておくべきことは,有節体の無節化であって,これは必ずしも節の癒着や癒合の結果のみとはかぎらない。多くの寄生甲殻類やヤドカリの腹部などの無節状態は,これを節の癒合と見るよりは,むしろ節間のキチン環状肥厚が停止したものと見るべきである。また脊椎動物の体腔における隔壁の消失,分節境界をこえての体壁筋の伸長などもその例であろう。ことに蛛形(ちゆけい)類の体制の進化は,尾部退化に加えてその無節化にあるといってさしつかえない。さらに環形動物のユムシ類にいたっては,その幼期に多毛類に特有な担輪子を生じ,しかも後体部に明白な分節の現れるにもかかわらず,変態後の成体は完全に無節である。軟体動物でもその起原が環形動物と祖先をともにするところから分節の可能性が想像されるが,少なくとも現存の軟体動物は,ヒザラガイ類のえらと殻板にわずかにその面影を残して全部が無節の動物となっている。
脊椎動物も,爬虫類以上になると,分節はもはや表面的にはなくなってしまっている。それに反して環形動物や節足動物では,内部に本来の分節構造を無視した分化がおこっていても,表面的にはきわめて忠実にもとの分節構造を保っている場合が多い。それのみならずヒル類やある種のミミズでは,一つの環節中にさらに多くの二次分節(輪環)を生じている。したがって,このような種類では実際の体節数以上に外観的にはひじょうに多くの節からできているように見える。
(2)脊椎動物の分節構造は,胚発生のごく早期に原腸から分離する体腔囊から形成される。その際,囊の分離は胚体の後方伸長と相まって繰り返して行われるので,前後にならぶ多くの分節構造を生じることとなる。ただし実際に分節構造の現れるのは胚体の上半部だけにかぎられ,下半部にはおよんでこない。それは各体腔囊が,まず上下2房に分かれてから上房のみが分節構造の形成にあずかるからである。これを体節somiteまたは原体節(古くは誤って原脊椎)と呼んでいる。そしてさらにその一部,房の外側の壁が間葉化して細胞に分散してしまうと,残った部分は骨格筋のもとである筋節となる。それに対して下房の壁は終始一貫無節のままにとどまり,この部分を側板といい,主として体腔の形成にあずかる。
→体腔
執筆者:岡田 要+田隅 本生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
動物の体が、頭から尾にかけて互いによく似た外観、構造をもつ部分の繰り返しにより成り立っている場合、この繰り返しの単位を体節とよぶ。その典型的な例はゴカイ、ミミズなど環形動物にみられる。ミミズの各体節中には一対の腎管(じんかん)、腹神経節、横行血管、体腔(たいこう)などの構造が各一セット収められている。エビ、カニなどの甲殻類、チョウ、トンボなどの昆虫類を含めた節足動物では、体節の癒合がおこり、腹部にしか体節構造は認められない。胚(はい)期の体節構造形成には外胚葉、中胚葉の両胚葉が関与している。
高等な動物は、表面からはそれとは認められないが、体節構造の名残(なごり)をもつ。原索動物のナメクジウオの筋節や、脊椎(せきつい)動物の脊椎骨は、これらの動物の体もやはり体節構造に基づいてつくりあげられることを示している。しかし、環形動物とは異なり、その体節構造は、もっぱら中胚葉から形成される。イモリなどでは、神経管、脊索、および消化管を包むように対称に広がる左右の中胚葉が、頭から尾に向かって順次小さな単位に区分される。この単位は原体節とよばれ、これから多くの中胚葉性器官、組織が派生する。おのおのの原体節は同時に背から腹にかけても三つにくぎられ、背側から上分節(じょうぶんせつ)、中分節(ちゅうぶんせつ)、下分節(かぶんせつ)とよばれる。上分節は発生が進むとさらに三部分に分かれる。脊索に面した部分が硬節で、のちに神経管を包む脊椎骨の一部となる。外胚葉に接する部分は皮節で、真皮に分化する。皮節と硬節の中間部が筋節で、将来筋肉をつくる。中分節は腎(じん)節ともよばれ、頭部からの位置によって前腎あるいは中腎をつくる。下分節には上・中分節にあった頭尾の方向でのくぎりがないので、胚の片側の下分節を一まとめにして側板とよんでいる。側板は内外二層に分離し、外胚葉に面した側が体壁板、内胚葉(消化管)側は内臓板である。この両者に包まれたすきまが真体腔となる。ニワトリ胚での実験によれば、内臓板の頭から尾に向かって生ずる性質の違いによって、1本の原腸管から食道、腺胃(せんい)、砂嚢(さのう)、腸など、性質の違う器官が分化していると考えられている。
[竹内重夫]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新