体系(読み)タイケイ

デジタル大辞泉 「体系」の意味・読み・例文・類語

たい‐けい【体系】

個々別々の認識一定原理に従って論理的に組織した知識全体
個々の部分相互連関して全体としてまとまった機能を果たす組織体。
[類語]組織体制構造造り組み立て骨組み仕組み成り立ち構成編成組成機構機序機制結構コンストラクションシステムメカニズム

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「体系」の意味・読み・例文・類語

たい‐けい【体系】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 個々別々のものを統一した組織。そのものを構成する各部分を系統的に統一した全体。
    1. [初出の実例]「まず第一に使用する水を循環させる計画を改め、新しい水を取り入れ、これを使用後捨てるという体系にすればよい」(出典:現代経済を考える(1973)〈伊東光晴〉III )
  3. 一定の原理によって統一的に組織された知識の全体。〔改訂増補哲学字彙(1884)〕
    1. [初出の実例]「一つの哲学と云ひ得る体系を成してゐない」(出典:竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の散歩)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「体系」の意味・わかりやすい解説

体系 (たいけい)

ギリシア語のシュステマsystēmaに由来する英語システムsystemなどの訳語。システムはほかに〈組織〉〈系〉などとも訳されるが,特に〈体系〉と訳される場合には,〈理論体系〉〈体系的思想〉などの用法から知られるように,通常は〈知識の組織〉を意味する。近代ヨーロッパ哲学には,真の知は必ずその根拠を有し,したがってすべての知はその根拠づけの連関をたどって究極の根拠にまでさかのぼる一つの組織のうちにあり,知は必然的に〈体系知〉となるべきだ,という考え方があった。ドイツ観念論の時代にWissenschaft(学)という言葉,しかももっぱら単数形のこの言葉が愛用されたが,それはこの言葉がWissen(知)に集合を示す後綴-schaftが付されており,〈組織化された知〉つまり〈体系知〉を指すのに好都合だったからである。この時代には,哲学はいっさいの断片的な知識を一つの体系知に組織するWissenschaftであるべきだと考えられていたのである。近代のこうした考え方の背後には,人間の知識を織りなす観念ideaは,神の知性のうちにあって同時的全体として必然的に連関し合っている観念に分与しており,したがって人間が知性を正しく働かせるならば,人間には継起的にしか与えられない諸観念も矛盾なく一つの全体に結びつけられるはずだという神学思想がひそんでいる。しかも,そうした知識の可能的全体は,神の観念にもとづいて創造された世界の存在を完全におおいうるはずなのである。人間のもつ諸能力のうち,特に知にこうした特権性を認めるところに,西洋哲学の特質がある。

 もっとも,西洋においても知の表現がつねに体系の形をとったわけではない。古代ギリシアのプラトンアリストテレスにあっては,知の伝達は対話や書簡の形式でおこなわれたし,古代末期のアウグスティヌスにあっては自伝体や異教徒論駁の形式がとられ,中世スコラ哲学にあっては,注釈,論駁,質疑応答の形式がとられるのが通常であった。トマス・アクイナスの《神学大全Summa theologiae》のsummaにしても,けっして体系を意味するものではなく,初心者に教義内容を教授するための配列を意味するものでしかない。その意味では,〈体系〉は近代ヨーロッパに特有の知のあり方だと言ってよい。なお,一概には言えないにしても,一般に東洋においては,真理はすでにいにしえの聖賢の言葉のうちに顕現していると考えられ,したがって後代の知はそれら聖賢の古言の訓詁注釈という形をとることが多い。当然ここでは知の体系的性格は問題になることはない。知の体系性を主張する西洋の知の概念はやはり特殊なものであろう。
システム
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「体系」の意味・わかりやすい解説

体系
たいけい
system

多様なものをまとめて統一と分節をもった全体を形成していること。天文学上の集合体 (たとえば銀河系) ,解剖学における神経系統などの組織,博物学における類種による系統的分類法などは,すべて一種の体系であるが特に理論体系,哲学体系をさすことが多い。これらは論理的に相互連関の関係におかれた思想であり,体系化によって思想の真理性が検証され,あるいは新たな真理の発見の糸口が生れる (特に科学の場合) 。この利点の反面,特に哲学の場合は体系化を主眼とすることによって現実を見誤る危険もある。 19世紀ドイツ哲学は大体系を輩出させた (たとえばカントヘーゲル,マルクス) が,20世紀は反体系の傾向が強く,G.マルセルのように日記体で哲学を展開する哲学者も出ている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「体系」の意味・わかりやすい解説

体系
たいけい
system 英語
System ドイツ語
système フランス語

一つの統一的全体を構成する、科学的あるいは哲学的命題の集合をいう。体系の統一は、今日では対象となる実在の構造との一致照応としてよりも、多くの場合、それを構成する命題相互の内的整合という側面から考察される。といっても、このことは、体系が実在と無関係な、人間の知的、主観的構成物であることを意味するわけではなく、むしろ、それが、実在の領野を初めて開示し構成するモデルとして、われわれと対象の接点に存立の場所をもつことを意味する。あらゆる知的体系は、多くつねに体系でないもの、あるいはまた別の体系の可能性に向かって開かれており、絶えず内的整合を問われると同時に、外に向かって開かれているのである。

[坂部 恵]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

普及版 字通 「体系」の読み・字形・画数・意味

【体系】たいけい

全体の組織。

字通「体」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

戒厳令

一般的には指定地域で、国の統治権の全部または一部を軍に移行し、市民の権利や自由を保障する法律の一部効力停止を宣告する命令。戦争や紛争、災害などで国の秩序や治安が極度に悪化した非常事態に発令され、日本...

戒厳令の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android