改訂新版 世界大百科事典 「保証渡し」の意味・わかりやすい解説
保証渡し (ほしょうわたし)
海上運送契約で船荷証券が発行されたときには,運送人は,これと引換えでなければ運送品の引渡しに応じなくてもよい(商法776,584条)。しかし,実際には,運送品が到着しているのに買主として船荷証券を入手していない場合が少なくないので,買主が,銀行を連帯保証人として,後日,船荷証券を入手しだい運送人に引き渡すこと,および証券と引換えでない運送品の引渡しによるいっさいの結果について責任を負うことを内容とする保証状を運送人に差し入れれば,証券と引換えでなくても運送人から運送品の引渡しを受けることができる。これを保証渡しという。保証渡しは,現在,商慣習として認められ,陸上運送営業や倉庫営業においても保証渡しが行われている。なお,保証状を徴しないで引渡しをすることを仮渡しまたは空渡しという。
船荷証券と引換えでなく運送品の引渡しを受けた者は,運送品の所有権を取得しないが,この者からさらに譲り受けた善意無過失の第三者は即時取得(民法192条)により保護される。また,運送人が保証渡しの後に正当な証券所持人から運送品の引渡しを請求された場合には,この者に債務不履行による損害賠償責任(商法577条)を負わなければならないが,運送人のこうむった損害については,保証状に基づき荷受人および保証銀行が賠償しなければならない。なお,保証渡しは,横領罪を構成せず,また当然には背任罪を成立せしめるものではない。
執筆者:石田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報