室町時代の京着年貢の一種。本来は公共のことに用いること,国家的なおおやけの用事などをいい,主としておおやけの費用,官府の費用を指す言葉であった。やや限定した意味では,室町期以降の荘園制動揺過程に頻出する代官請負制下の京着年貢を意味するようになる。室町期の荘園支配は,武家領,公家領たるを問わず,実質的荘務権を放棄し,それを現地の実力者にゆだねていた。中央集住の荘園領主,あるいは幕府や遠隔地に所領をもつ武家領主にとっても,契約した年貢納入額を確保することが困難かつ重要となった。これが京着年貢すなわち公用で,公用高は荘園公領の定年貢高と直接対応したものではなく,きわめて流動的であったことに特徴がある。契約相手によって同一荘園の公用が40貫文とか90貫文であったりするのである。これが一般の代官請下の荘園年貢と質的に異なるところであった。
執筆者:田沼 睦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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