典韋(読み)てんい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「典韋」の意味・わかりやすい解説

典韋
てんい
(?―197)

中国、後漢(ごかん)末、曹操(そうそう)の武将。陳留(ちんりゅう)郡己吾(きご)県(河南(かなん)省寧陵(ねいりょう)県)の人。容貌(ようぼう)は立派で、腕力は人並み以上で、固い節義と侠気(きょうき)の持ち主であった。夏侯惇(かこうとん)に従い、戦功を立てたのち、司馬(しば)となった。曹操が濮陽(ぼくよう)で呂布(りょふ)と戦った際には、敵陣を陥れる部隊に志願し、数十人を率いて活躍した。このとき典韋は、数十本の手戟(しゅげき)を手にして、5歩手前まで敵が近づいたら知らせるように命じ、敵に投げると百発百中であった。この功績により都尉(とい)に任命され、曹操の側近となって親衛隊を率いた。軍中では、「帳下(ちょうか)(親衛隊)の壮士に典君あり。八十斤(きん)(約18キログラム)の双戟(そうげき)を軽々とあやつる」と、典韋の並外れた力の強さを称賛する言葉がつくられた。のち張繍(ちょうしゅう)に背かれた曹操を守って、数十か所の傷を負いながら、2人の敵を両脇に挟み、壮絶な立ち往生を遂げた。曹操は、その場所を通るたびに典韋を祀(まつ)り、その功績をたたえ続けた。

[渡邉義浩]

『渡邉義浩著『「三国志」武将34選』(PHP文庫)』

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