出定後語(読み)シュツジョウコウゴ

デジタル大辞泉 「出定後語」の意味・読み・例文・類語

しゅつじょうこうご〔シユツヂヤウコウゴ〕【出定後語】

江戸中期の仏教書。2巻。富永仲基とみながなかもと著。延享2年(1745)刊。仏典歴史的に研究し、それらが釈迦直説じきせつでなく、あとから追加されて成立したものとして、大乗仏教を否定した。

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精選版 日本国語大辞典 「出定後語」の意味・読み・例文・類語

しゅつじょうこうごシュツヂャウ‥【出定後語】

  1. 江戸中期の思想書。二巻。富永仲基著。延享元年(一七四四)刊。経典分析批判によって仏教の本質・歴史を論じ、大乗仏教を非とする。排仏論者によって利用されたが、本書はむしろ仏教思想の正確な解明を目ざしたもので、近世の高度な批判精神の一成果として注目される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「出定後語」の意味・わかりやすい解説

出定後語
しゅつじょうごご

「しゅつじょうこうご」とも読む。江戸時代中期の排仏論の書。2巻。上巻は13章、下巻は12章からなる。1744年(延享1)富永仲基(とみながなかもと)の著述。仏教経典を分析批判し、仏教の本質と歴史を論じて大乗仏教を否定した。まず、仏教経典は釈迦(しゃか)が説いたものではなく、すべて後世の者の作為であり、多くは仏滅500年後の人の作であるとする。また現在の仏教も儒教も終局的にはいずれも倫理であり優劣はない、とする。さらに仏教各宗派の対立も「善をなす」点では同じ目的であるとして醜い宗派間の争いを否定するとともに、その宗派性も否定した。出定とは禅定境地から平常の状況に戻ること。ここでは仏教を離れて客観的に批判するの意味で書名がつけられている。

[圭室文雄]

『加藤周一編『富永仲基・石田梅岩』(『日本の名著18』1972・中央公論社)』『永田紀久・有坂隆道校注『富永仲基・山片蟠桃』(『日本思想大系43』1973・岩波書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「出定後語」の意味・わかりやすい解説

出定後語 (しゅつじょうごご)

江戸中期の仏教思想史論。富永仲基著。2巻。1745年(延享2)大坂刊。立論心理の分析による独創的な思想発達史論で,仏教思想は仏徒釈尊に名を借り,自説を誇示しつつ前説に〈加上〉し,順次発達させたもので,大乗教は釈迦の所説ではないと論じた。また立論を規制する3条件を人(部派),世(時代),類(言語の用法)とし,民族の性癖文化類型としてとらえ,思想の比較的視点を提起した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「出定後語」の意味・わかりやすい解説

出定後語
しゅつじょうこうご

富永仲基著。2巻。延享2 (1745) 年刊。仏教書。経典成立に関し,現在の大乗仏教はそれ以前の説に次々に新説を加上してでき上がったものであるとの独創的な加上説を打出した。これは従来教相判釈や主観的選択に基づかない科学的,実証的な文献学,思想史学に通じる面をもち,大乗仏教は釈尊の直説ではないとする大乗非仏説の先駆である。本書公刊に影響され『赤裸々』 (服部天游) ,『出定笑語』 (平田篤胤) などが著わされた。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「出定後語」の解説

出定後語
しゅつじょうごご

富永仲基(なかもと)が著した思想書。2巻。1745年(延享2)出版。書名は,釈迦は禅定から出た後に説法したという意味で,みずからを仏に擬している。仏教経典すべてが釈迦の説ではなく,のちに釈迦にかこつけて付加・補整(加上)されたものだというのが主張の中心。大乗非仏説論と仏教の近代的研究の先駆とされる。本書刊行後,排仏論・護法論の議論が活発化した。「日本思想大系」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「出定後語」の解説

出定後語
しゅつじょうごご

江戸中期,富永仲基が仏教思想を批判した書
1745年刊。2巻。仏教経典を分析して仏教思想やその展開について論述し,その方法論に「加上の説」をたて後世の付加物の除去を主張。本居宣長ら国学者の仏教批判に影響を与えた。

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