分裂気質(読み)ぶんれつきしつ(英語表記)schizothymia

改訂新版 世界大百科事典 「分裂気質」の意味・わかりやすい解説

分裂気質 (ぶんれつきしつ)
schizothymia

クレッチマーによる性格類型の一つ。彼は,統合失調症精神分裂病)から分裂病質(統合失調病質)schizoidと分裂気質(統合失調気質)への移行系列を提起したが,このうち正常な範囲のものを分裂気質と呼んだ。感受性には過敏(敏感)と鈍感(冷淡)の両極があり,人と交わる態度は自閉的である。精神的テンポはしばしば飛躍性と固着不変性との間を往来し,精神運動機能はしばしば刺激に不相応で,抑圧麻痺阻止硬直などを示す。体型やせ型と親和性を示す。具体的な人間像の代表としては,上品で感覚の繊細な人,孤独な理想家,冷たい支配者と利己的な人,無味乾燥または鈍感な人の四つのタイプをあげている(《体格と性格》1921)。
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百科事典マイペディア 「分裂気質」の意味・わかりやすい解説

分裂気質【ぶんれつきしつ】

分裂質とも。E.クレッチマーによる気質の分類の一型。一つのことに固着するかと思うと,急にそれから飛躍したりし,精神感受性は過敏と同時に鈍感なのが特徴。一般に非社交的,無口で,生活態度は自閉に傾きやすい。これの程度のひどいものを分裂病質といい,統合失調症精神分裂病)の病前性格に多い。
→関連項目気質循環気質体質

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「分裂気質」の意味・わかりやすい解説

分裂気質
ぶんれつきしつ
schizothymia

敏感さと鈍感さという相反する感受性の釣合いに問題のある気質。ときとして刺激に敏速に反応しない反面で,緊張しやすく,またとっぴなまでの頑固さを示す。上品で繊細な反面,支配的で利己的であり,孤独な夢想家である反面,人間味の乏しい鈍感なところもある。詩人,理論家,策略家などに多くみられる。体型は健康なやせ型が多い。 E.クレッチマーの体質・性格論の中心概念の一つ。アメリカ精神医学では,分裂的人格 schizoid personalityということが多い。分裂的人格という概念は,クレッチマーの分裂気質とほとんど同義に記述的に使われる場合と,その基盤にある力動的特徴を精神分析の立場から説明して用いる場合とがある。

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世界大百科事典(旧版)内の分裂気質の言及

【気質】より


[気質の分類]
 こんにち最もすぐれた気質類型論として通用しているのは,やはりドイツの精神医学者クレッチマーのそれ(1921)であろう。彼は,内因精神病である精神分裂病と躁鬱病をもとにして,正常者の気質を引き出し,これを〈分裂気質〉〈循環気質〉と名づけたが,のちに,癲癇(てんかん)についても同様の分析を行って,これと親和的な〈粘着気質〉を見いだし,こうして三つの基本類型を同じ水準で並列させた。その根拠になったのは,分裂病者や躁鬱病者の病前には特別の気質がある程度まで共通にみとめられること,この同じ気質は彼らの家系のうちにも見いだせること,分裂病や躁鬱病の示す心理的特質はこれらの気質を拡大し誇張したものと考えられることなどで,こうした知見は癲癇病者の場合にも当てはまるという。…

※「分裂気質」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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