厭勝銭(読み)エンショウセン(英語表記)yàn shèng qián

デジタル大辞泉 「厭勝銭」の意味・読み・例文・類語

えんしょう‐せん【×厭勝銭】

縁起のよい語句や図を鋳出し、災難よけや幸運を願った、まじない用の銭の形をしたお守り中国ではから六朝時代にかけて流行し、日本では、室町時代から江戸時代にかけて行われた。

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精選版 日本国語大辞典 「厭勝銭」の意味・読み・例文・類語

あっしょう‐せん【厭勝銭】

〘名〙
道教呪文(じゅもん)を鋳(い)た銭状の護符星祭に供え、悪鬼悪害を避けるのに用いた。
吉祥を意味することばを鋳出した玩具の銭。えんしょうせん。

えんしょう‐せん【厭勝銭】

〘名〙 まじないの銭。中国で、銭に縁起のよいことばや龍馬文様などを彫って厭勝(まじない)とし、わざわいを避け、好運を願ったもの。漢代に出現し、唐、宋以後さかんになった。また、吉祥を意味することばを鋳出した玩具の銭をもいう。あっしょうせん。ようしょうせん。

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改訂新版 世界大百科事典 「厭勝銭」の意味・わかりやすい解説

厭勝銭 (ようしょうせん)
yàn shèng qián

中国において,流通を目的としてではなく,魔よけ・まじないを目的として作られた私銭をいう。銭の形をした護符と考えればよい。俗に〈えんしょうせん〉と呼び慣わしている。厭勝という言葉には,災難をはらう,悪魔を圧伏するという消極的な意味があるが,厭勝銭に刻まれた文字にはむしろ積極的な意味をもつ吉祥語や慶福願望を表すものが多い。万災永滅,万病不侵などというのもあるが,千秋万歳,長命富貴,大宜子孫,花生不老などのようなものの方が多い。厭勝銭には表面は通貨を模し,裏面にこれらの文字を刻んだり人物や動物などの図を刻むのが一般だが,なかには銭の形をとらないものもある。厭勝銭の製作は前漢に始まり,とくに唐・宋以後盛んになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「厭勝銭」の意味・わかりやすい解説

厭勝銭
えんしょうせん

銭の形をかたどった中国の護符(お守り)の一種。正しくは「ようしょうせん」といい、厭勝(ようしょう)とはまじないをもって邪悪を払うこと。銭の表(おもて)面に「千秋万歳」「天下太平」「去殃除凶(きょおうじょきょう)」などの吉祥語を書き入れ、背面北斗、双魚、亀蛇(きだ)、竜鳳(りゅうほう)、新月などの図案を刻している。讖緯(しんい)説が流行した王莽(おうもう)の新(9~23)の時代に起源をもち、唐・宋(そう)以降に至っても盛んに鋳造された。形状は長方形など多彩であり、日本に伝来したものは、絵銭、画銭として珍重されている。

[尾形 勇]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「厭勝銭」の意味・わかりやすい解説

厭勝銭
えんしょうせん
Yan-sheng-qian

縁起物や護符として特別な図柄や文字を配した中国の銭貨をいう。現在家庭で用いるおろしがねのような形をして,銭の形とはかけ離れたものもある。宋・元時代以降に多くみられる。なかには漢代にさかのぼるものもあるといわれる。

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世界大百科事典(旧版)内の厭勝銭の言及

【厭勝銭】より

…俗に〈えんしょうせん〉と呼び慣わしている。厭勝という言葉には,災難をはらう,悪魔を圧伏するという消極的な意味があるが,厭勝銭に刻まれた文字にはむしろ積極的な意味をもつ吉祥語や慶福の願望を表すものが多い。万災永滅,万病不侵などというのもあるが,千秋万歳,長命富貴,大宜子孫,花生不老などのようなものの方が多い。…

※「厭勝銭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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