反応原理(読み)はんのうげんり(英語表記)reaction principle

改訂新版 世界大百科事典 「反応原理」の意味・わかりやすい解説

反応原理 (はんのうげんり)
reaction principle

マグマ結晶作用により火成岩が生じる過程についての重要な原理。1922年N.L.ボーエンによって提唱された。冷却に伴ってマグマから結晶が晶出するが,一度晶出した結晶は,結晶作用が進むにつれてマグマ(正確にはマグマ中の液)と反応して,その化学組成を変化させたり,あるいは別の種類の結晶に変化する。例えば,マグマから晶出した斜長石は結晶作用が進むにつれてマグマと反応してしだいにNaに富むようになる。また,比較的シリカに富む玄武岩質マグマや安山岩質マグマにおいて,一度晶出したカンラン石は冷却に伴いマグマと反応して斜方輝石ピジョン輝石に変化する。このように,結晶と液とが反応するような系を反応系と呼ぶ。反応系であるマグマの結晶作用では,結晶とマグマとの反応の程度によって残ったマグマの化学組成が広く変化する。すなわち,反応が十分に進めばマグマは平衡の場合の結晶作用に近い組成変化をするが,反応が十分に行われない場合には,マグマは平衡からはずれた組成変化をする。その結果広い化学組成の範囲の火成岩を生じうる。結晶とマグマの反応の程度,あるいは平衡からのはずれの程度は,マグマの冷却速度や結晶作用の途中でのマグマと結晶の分離や,結晶のまわりの反応縁形成の速さや時期などで決まる。このように,マグマ(液)と結晶との反応の程度や反応の起こる時期によりマグマの化学組成が広範囲に変化して,多様な火成岩を生じることを反応原理という。
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百科事典マイペディア 「反応原理」の意味・わかりやすい解説

反応原理【はんのうげんり】

マグマから晶出する結晶が温度降下につれてマグマ残液と反応し,結晶自身およびマグマ残液の組成が変化していくときに現れる法則性。1920年代にボーエンが明らかにした。火成岩の主要造岩鉱物についてみると,斜長石の成分は灰長石からソウ長石まで残液との反応で連続的に変化し(連続反応系列),また,カンラン石→輝石→角セン石→黒雲母の順で先の鉱物から後の鉱物が不連続的に形成される(不連続反応系列)。この原理はその後の火成岩成因論に著しい影響を与えた。→分別晶出作用

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化学辞典 第2版 「反応原理」の解説

反応原理
ハンノウゲンリ
reaction principle

1928年,N.L. Bowenによって提唱された火成岩成因論の基礎.それは次の二つの反応によって特徴づけられる.
(1)一つの固溶体における連続的な反応,
(2)不連続的な反応.
すなわち,マグマから初期に晶出した鉱物が,マグマの冷却とともに残りのマグマとふたたび反応し,鉱物の組成もマグマの組成もしだいに変化し,またある時期になるとそれまで晶出していた鉱物がマグマと反応して溶けはじめ,そのかわりに新しいほかの鉱物が晶出する.このようにして鉱物とマグマの反応によって各種の組成の岩石がつくられるという考え方.

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岩石学辞典 「反応原理」の解説

反応原理

火成岩のマグマからの結晶作用の過程では,結晶と液の間に反応関係が存在している.ボーエンは天然の岩石中の鉱物組み合わせとそれらの晶出順序の観察を基にして,鉱物の反応関係を組み立てた.これは反応原理として知られ,珪酸塩系では早期に形成された鉱物が,結晶作用の後の時期に熔融体と反応して,反応系列で低温の他の鉱物を生成するという概念である[Bowen : 1922].

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世界大百科事典(旧版)内の反応原理の言及

【火成岩】より

…その反応の程度によって残りのマグマの化学組成はさらに変化する。このことはN.L.ボーエンによって1922年に見いだされ,反応原理と呼ばれている。さらに,地下深部で生じるマグマそのものの化学組成がマグマの生じる条件の違いによって異なるため,さらに多くの種類の火成岩を生じる。…

【結晶分化作用】より

…液体不混和とは,高温では均質な液体であるマグマが,温度降下に伴って,水と油のようにたがいに混合しない2種類の液相に分離し,それぞれの組成をもった火成岩をつくることである。
[分別結晶作用と反応原理]
 マグマは多成分系に属する複雑な化学組成のケイ酸塩溶融体である。温度の降下につれて,しだいに結晶作用が進行する。…

【ボーエン】より

…この間,クイーンズ大学(1919‐20)とシカゴ大学(1937‐47)の教授も務めた。同実験所では火成岩を構成する多種のケイ酸塩のいくつかの系の溶融体の,物理化学的平衡関係について実験し,晶出する結晶と残液の反応が重要であるとする〈反応原理〉を提唱した。そしてもとになる玄武岩マグマからの結晶の晶出と反応,分化と固結によって,各種の火成岩が形成されるとした。…

※「反応原理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」