デジタル大辞泉
「取」の意味・読み・例文・類語
とり【取(り)】
[名]
1 取ること。また、その人。多く他の語と複合して用いる。「音頭取り」「かじ取り」「月給取り」
2 《多く「トリ」と書く》寄席で、最後に出演する人。「取りをつとめる」
3 最後に上演・上映する呼びもの番組・映画。
4 (「…どり」の形で、数量を表す語に付けて用いる)
㋐その量の米を知行として受け取る武士。「千石取り」
㋑その量の米でつくる供え餅。「二合取り」
㋒その金額の給料を取る者。
「三十円―の会社員」〈一葉・ゆく雲〉
㋓その揚げ代を取る下級の遊女。
「三匁―は、さのみいやしからず」〈浮・一代女・二〉
[接頭]動詞などに付いて、語調を整え、改まった感じにするのに用いる。「取りつくろう」「取りみだす」
[類語](2)真打ち
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とり【取】
[1] 〘名〙 (動詞「とる(取)」の
連用形の名詞化)
① 手に握り持つこと。手に持って使うこと。また、その人。多く「さおとり」「かじとり」など、他の語と複合して用いる。
※田制要覧(江戸末か)「今
取箇と云は、公儀の言葉にては只取と云べき也」
③ その人のものとなる分。とりぶん。とりまえ。
※
浮世草子・元祿大平記(1702)四「大夫の売上げ引舟ともに六拾三匁 内揚やの取廿三匁 天神は三拾匁」
④ 馬の背に近いたてがみ。とりがみ。
※岡本記(1544)「馬のしゅみのかみと申候をば、
わらはとりとも申べし」
⑤ 古道具の売買。とり売り。
※雑俳・塵手水(1822)「これが秀一・取りの仏だんふる市や」
⑦ 寄席(よせ)で、最後に出演する者。
※雑俳・机の塵(1843)「何時じゃ・取まで聞いて居らりょかな」
⑧ 興行界で、最後に上演・上映する呼び物の番組や出演者。
※夢声半代記(1929)〈
徳川夢声〉トンガリ「私は岩尾剛氏の
休演の
御蔭で、トリの呼び物たる『
ウラルの鬼』全二巻を受持たされた」
[2] 〘接頭〙 動詞の上に付けて改まった語調にするのに用いる。「とり片づける」「とり調べる」「とりつくろう」「とり乱す」など。
と・れる【取】
〘自ラ下一〙 と・る 〘自ラ下二〙
① 付いていたものが、そこから離れ落ちる。
※清原国賢書写本荘子抄(1530)一「紬は糸さきをぬきんづれば、はらりと中がとるるぞ」
※人情本・英対暖語(1838)三「汗がとれて涼しくなるヨ」
② 生じていた、あまり好ましくない状態が消えてなくなる。止む。
※
日葡辞書(1603‐04)「カゼガ toreta
(トレタ)」
③ 時間がかかる。
※浮世草子・
傾城禁短気(1711)四「念を入れる間
(ま)がとれて」
④ 収穫物が得られる。
※日葡辞書(1603‐04)「ウヲガ ヲヲク toreta(トレタ)」
⑤ (撮) 写真にうつる。
※女夫波(1904)〈
田口掬汀〉前「まあ綺麗に撮影
(トレ)て居ますことね」
⑥ 理解される。解釈できる。
※永日小品(1909)〈
夏目漱石〉モナリサ「結んだ口を是から開けやうとする様にも取れる」
※野分(1907)〈夏目漱石〉七「非常に釣合がよく取れてゐる」
どり【取】
〘語素〙
① 米の量をいう語に付けて用いる。
(イ) それを知行として受け取る武士を呼ぶのに用いる。「
五百石取」「千石取」など。
(ロ) 量をいう語に付いて、その量をもって作る供
(そな)え餠の
大小を呼ぶのに用いる。「二合取り」「一升取り」など。
② 金額を表わす語に付けて用いる。
(イ) 買うのにそれだけの金がいる品をいうのに用いる。
駄菓子の類にいうことが多い。
(ロ) それだけの
揚代をとる下級の遊女を呼ぶのに用いる。
※浮世草子・好色一代女(1686)二「先
(まづ)三匁取はさのみいやしからず」
(ハ) それだけの給料をとる者を呼ぶのに用いる。
※ゆく雲(1895)〈樋口一葉〉上「三十円どりの会社員」
とら‐・せる【取】
〘他サ下一〙 とら・す 〘他サ下二〙
① 受けとらせる。下の者に与える。
※万葉(8C後)七・一一九六「裹(つと)もがと乞はば令取(とらせむ)貝拾ふわれを濡らすな沖つ白波」
② (動詞の連用形に「て」を添えた形に付けて補助動詞のように用いる) …してやる。
※天草本平家(1592)二「ハワ トヂ ニモ ヨイ イエ ヲ ツクッテ toraxe(トラセ)」
とら‐・す【取】
※俳諧・西鶴五百韻(1679)早何「問屋半分雪のむら消〈西友〉 惣領に是ほととらす芳野山〈西六〉」
しゅ【取】
〘名〙 (upādāna の訳語) 仏語。煩悩(ぼんのう)のこと。食欲・性欲などの欲望。十二因縁の一つに数え、また、これを欲取・見取・戒禁取(かいこんじゅ)・我語取の四取に分ける。
※秘蔵宝鑰(830頃)中「受為レ因取為レ縁」
とっ【取】
〘接頭〙 (接頭語「とり(取)」の変化したもの) 動詞の上に付いて意味を強める。「とっ組む」「とっつかまえる」など、やや俗語的表現に用いる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
取
とり
江戸時代,田地に賦課される年貢の税率。免あるいは免合と同様の意味をもち,「三つ取」というのは3割の税率のことで,「免三つ」と同義である。 (→検見法 , 定免 )
取
しゅ
upādāna
仏教用語。 (1) 執着すること。 (2) 初期仏教の重要な教理である十二縁起 (→十二因縁 ) の第9番目のもの。他のものに執着することで,煩悩の別名とされることもある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の取の言及
【仏教】より
…認識の対象)→(5)六入(ろくにゆう)(眼・耳・鼻・舌・身・意の六種の感官)→(6)触(そく)(認識,感官,対象の接触)→(7)受(じゆ)(苦楽などの感受)→(8)愛(渇愛(かつあい)。本能的欲望)→(9)取(しゆ)(執着。物,物の見方,まちがった行為軌範,自我に対する固執)→(10)有(う)(欲界,色界,無色界という[三界]の生存状態。…
※「取」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」