口碑(読み)こうひ

精選版 日本国語大辞典 「口碑」の意味・読み・例文・類語

こう‐ひ【口碑】

〘名〙
① (石碑に刻んだ文章が後までながく残るのになぞらえて) いいつたえ。伝説
日本詩史(1771)一「但世之口碑、徃往失実」
読本椿説弓張月(1807‐11)残「この両説は土俗の口碑(コウヒ)に伝る所、是不(しかるやいなや)をしらず」
世間のうわさ話。
鳥追阿松海上新話(1878)〈久保田彦作〉「密に身を寄せ人しれず世間の口碑(コウヒ)を避るに如ずと」

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デジタル大辞泉 「口碑」の意味・読み・例文・類語

こう‐ひ【口碑】

《石碑のようにながく後世にのこる意》古くからの言い伝え。伝説。「口碑に残る悲話
[類語]物語はなし叙事ストーリーお話作り話虚構フィクション説話小説伝え話昔話民話伝説言い伝え

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「口碑」の意味・わかりやすい解説

口碑
こうひ

石碑に刻んだ文が長く残るのになぞらえて、口承に残った言い伝えをこうよぶ。前代の生活の痕跡(こんせき)を語る昔話、伝説、語り物、民謡童唄(わらべうた)などのほかに、唱え言、諺(ことわざ)、謎(なぞ)などが含まれる。口から耳へと、世代を繰り返しながら伝えられる文芸で、一定の形式をもって、時代の習慣・風俗が変わった今日でも生命を保ち、同じ内容が場所を変えて点在している。特定作者がなく、多くの人に語られ聴かれてきたことが特徴。記録にとどめられないために、古い時代の確証が定められず、考証の限界はあるが、庶民資料の大半はこの形態で伝承された。

[渡邊昭五]

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百科事典マイペディア 「口碑」の意味・わかりやすい解説

口碑【こうひ】

口承文芸

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普及版 字通 「口碑」の読み・字形・画数・意味

【口碑】こうひ

口承。

字通「口」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の口碑の言及

【伝説】より

…民間説話,または口承文芸の一種。その内容が話し手とその周囲の人々に真実であると信じられている,過去のできごとに関して述べられた話をいい,古来,〈いいつたえ〉や〈いわれ〉と称されてきたもの,すなわち由来や口碑(こうひ)の一種といえる。しかし由来や口碑が現在の事物に関する説明や過去のできごとに関する話全般をさすのに対し,伝説は特定の土地にある具体的な事物と結びつけて語られる点で区別される。…

※「口碑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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