左右の手のひらを胸または顔の前で合わせること。仏や菩薩などを礼拝するときの作法であるが,仏教徒の間では日常の挨拶にも用いられる。サンスクリットのアンジャリañjaliの訳。合掌は古くからインドで行われていた敬礼(きようらい)作法の一種で,それが仏教にも取り入れられたものである。インド人は,右手は清浄,左手は不浄を表すとみて,これら両手を使い分ける習慣があるが,仏教でも右手を仏,左手は衆生(しゆじよう)を表すものとして,これらを合わせたところを,仏と衆生が合体した姿,すなわち成仏の相(そう)を表すものと考える。密教ではさらに左右の手と指にそれぞれ特別の意義と名称を与え,これらの合わせ方によって12の型を区別する。これを〈十二合掌〉といい,〈六種拳〉とともに印相(いんぞう)の基本をなすものとされる。十二合掌とは,(1)堅実心,(2)虚心(こしん)(空心),(3)未敷蓮華(みふれんげ),(4)初割蓮,(5)顕露,(6)持水,(7)帰命(きみよう)(金剛),(8)反叉(ほんさ),(9)反背互相著(ほんぱいごそうぢやく),(10)横拄指(おうちゆうし),(11)覆手向下,(12)覆手,の各合掌のことであるが,そのうちでも特に基本となるのは,両手と指をぴったり合わせる(1)の堅実心合掌と,両手の掌(たなごころ)を合わせ,右が上になるように十指の頭を交差させる(7)の帰命(金剛)合掌である。
執筆者:岩松 浅夫
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両方の手のひらをあわせ、胸あるいは額に当てて行う礼拝の表現。サンスクリット語およびパーリ語のアンジャリañjaliの訳語。インド古来の敬礼法の一種。その様式には、十指をそろえて手のひらをあわせる通常の合掌、十指を交互に組み合わせる叉十(しゃじゅう)、握り手を他方の手で覆う叉手(しゃしゅ)などがあり、いずれも輪と十字に象徴される統合、中心を示している。また右手優先の観念は世界にほぼ共通するが、清浄な右手と不浄な左手との合一からなる合掌は、聖と俗の両面にかかわる人間の純真な祈りの姿にほかならない。仏教では、とくに真言密教において合掌を12種に分類し、それぞれに独自の解釈を与えたが、一般に仏や菩薩(ぼさつ)を念じる場合、礼拝する場合、あるいは僧や信者の間で挨拶(あいさつ)を交わす場合に用いられる。建築にみられる合掌造や合掌鳥居、能楽における合掌の型、さらには合掌泳ぎ、相撲(すもう)の合掌ひねりなど、日本の文化に占める合掌の比重も少なくない。
[片山一良]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…はり間寸法の大小でいろいろな形式があるが,図-cに示す真束(しんづか)小屋組みと呼ばれるものがもっとも代表的なものである。和風小屋組みと基本的に異なるのは,母屋を,合掌と呼ばれる登りばりで受け,その合掌が左右に開かないように小屋ばりで結ぶところである。このため,小屋ばりは引張力だけを負担することになり,比較的細い部材ですむ。…
…古建築ではもっと間隔が狭く,部材のあきが垂木の成(せい)(長さ,幅に対して下端から上端までの垂直距離をいう)と同じものを本繁(ほんしげ)割り,垂木の成と幅の和と同じものを半繁割りという。ふつう垂木にかかる屋根の荷重は棟木や母屋,軒桁を通じて下方に分散されるが,棟持柱や真束(しんづか),小屋束がなく,すべての屋根の荷重が直接二列の壁の上端に集中するような垂木の組み方を垂木構造ともいい,その場合の部材は力垂木,または合掌として区別される。【太田 邦夫】。…
…ビルマ(現,ミャンマー)やマレーシアやエスキモーには鼻をよせて相手のにおいをかぐ挨拶があるが,それらは接触と非接触の中間形態といえよう。身体的接触を伴わない身ぶりとしては,日本人のするようなおじぎ,インドのヒンドゥー教徒や東南アジアや日本の仏教徒がする合掌(インドでもイスラム教徒は抱擁するのがふつうである),あるいはマオリ族が行う舌を出す挨拶などがあげられる。西洋人も国王に拝謁する際には,男は頭を下げ,女は片足を引いてひざを軽く折って挨拶するのが作法である。…
※「合掌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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