吉行淳之介(読み)ヨシユキジュンノスケ

デジタル大辞泉 「吉行淳之介」の意味・読み・例文・類語

よしゆき‐じゅんのすけ【吉行淳之介】

[1924~1994]小説家岡山の生まれ。「驟雨」で第31回芥川賞を受賞し、以降「第三の新人」の一人として活躍。他に「闇のなかの祝祭」「砂の上の植物群」「夕暮まで」など。

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精選版 日本国語大辞典 「吉行淳之介」の意味・読み・例文・類語

よしゆき‐じゅんのすけ【吉行淳之介】

小説家。岡山県出身。東京大学英文科中退。父は新興芸術派作家として知られた吉行エイスケ。昭和二九年(一九五四)「驟雨」で芥川賞受賞。「第三の新人」の一人として活躍した。著「砂の上の植物群」「暗室」など。大正一三~平成六年(一九二四‐九四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉行淳之介」の意味・わかりやすい解説

吉行淳之介
よしゆきじゅんのすけ
(1924―1994)

小説家。大正13年4月13日、岡山市生まれ。父エイスケは昭和の初期、新興芸術派の作家として知られた。東京大学英文科中退。同人誌『葦(あし)』『世代』『新思潮』に加わり、『星の降る夜の物語』(1947)ほかの散文詩風の小説を書き出す。幾度か候補にあげられたのち、『驟雨(しゅうう)』(1954)により芥川(あくたがわ)賞受賞。結核の療養中の受賞であった。安岡章太郎庄野(しょうの)潤三、遠藤周作らとともに「第三の新人」の主流とみられた。ついで長編原色の街』(1956)では娼婦(しょうふ)の町の女を通じて性愛の世界を活写し、一方、長編『焔(ほのお)の中』(1956)では戦争の時代のなかでの自身の少年期からの体験を通して人間の「関係」を追究した。前者系列の作品には『娼婦の部屋』(1958)、後者の系列には『風景の中の関係』(1960)が続いた。『砂の上の植物群』(1963)あたりからは倒錯した性への関心が作品化され、『星と月は天の穴』(1966)、『暗室』(1969)がこれに次いだ。評判作であった『夕暮まで』(1965~78)もこの一連にあるとみられる。短編集『不意の出来事』(1965)、『鞄(かばん)の中身』(1974)などからも感性的な文体を介して多彩なイメージが読み取れる。『すれすれ』(1959)ほかの読み物風の作品、『私の文学放浪』(1965)、『生と性』(1971)などのエッセイ類も多く、対談名手ともいわれる。1981年(昭和56)芸術院会員。なお、詩人・芥川賞作家の吉行理恵、女優の吉行和子はその妹。

[保昌正夫]

『『吉行淳之介全集』17巻・別巻3(1983~85・講談社)』『『吉行淳之介自選作品』全5巻(1975・潮出版社)』

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百科事典マイペディア 「吉行淳之介」の意味・わかりやすい解説

吉行淳之介【よしゆきじゅんのすけ】

小説家。岡山県生れ。新興芸術派の花形作家吉行エイスケを父にもつ。詩人吉行理恵は妹。東大英文科中退後,大衆娯楽雑誌の記者となる。その間《原色の街》《ある脱出》が芥川賞候補となり,《驟雨》(1954年)で第31回芥川賞受賞。同世代の作家たちとの交流が緊密になり,〈第三の新人〉と呼ばれる。以後《鳥獣虫魚》《娼婦の部屋》《砂の上の植物群》などを発表。《星と月は天の穴》が芸術選奨,《暗室》が谷崎潤一郎賞,《夕暮まで》が野間文芸賞を受賞。随筆に《私の文学放浪》などがある。
→関連項目浦山桐郎新思潮野坂昭如安岡章太郎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吉行淳之介」の意味・わかりやすい解説

吉行淳之介
よしゆきじゅんのすけ

[生]1924.4.13. 岡山
[没]1994.7.26. 東京
小説家。新興芸術派の作家吉行エイスケと美容家あぐりの長男。 1947年東京大学英文科中退。『原色の街』 (1951) ,『谷間』 (52) を経て『驟雨』 (54) で芥川賞を受け,庄野潤三,安岡章太郎,三浦朱門らとともに「第三の新人」と呼ばれるグループを形成した。きめの細かい洗練された感覚を生かした文体で,性の深淵に人間の確かな実在を認識しようとするモチーフを追求し,『娼婦の部屋』 (58) ,『砂の上の植物群』 (63) ,『暗室』 (69) ,『鞄の中身』 (74) ,『夕暮まで』 (78) などを書いた。 79年日本芸術院賞受賞。芸術院会員。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「吉行淳之介」の解説

吉行淳之介 よしゆき-じゅんのすけ

1924-1994 昭和後期-平成時代の小説家。
大正13年4月13日生まれ。吉行エイスケの長男。昭和29年「驟雨(しゅうう)」で芥川賞。「第三の新人」の主流と目される。性を通して人間存在の意味をさぐりつづけ,45年「暗室」で谷崎潤一郎賞,51年「鞄の中身」で読売文学賞,53年「夕暮まで」で野間文芸賞。54年芸術院賞。芸術院会員。平成6年7月26日死去。70歳。岡山県出身。東大中退。作品はほかに「砂の上の植物群」「技巧的生活」など。
【格言など】私は現在でも「ついでに生きている」という気分が,心のどこかにある(「暗室」)

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