日本大百科全書(ニッポニカ) 「吸収係数」の意味・わかりやすい解説
吸収係数
きゅうしゅうけいすう
光および放射線や粒子線などの物質中での吸収に関する減衰定数のこと。たとえば強度I0の光が一様な物質中を距離xだけ進むと、その強さIはxの指数関数I=I0e-αxで表される関係が成り立つ。これをランバートの法則という。対数を用いて書き直せばlog(I0/I)=αxとなり、入射光と透過光の強度比の対数が吸収層の厚さに比例することがわかる。この比例定数αが吸収係数であるが、光の気体または液体による吸収については吸光係数ともいう。吸収係数および関連用語はいろいろあって、その定義もまちまちであるので注意を要する(消衰係数、質量吸収係数、線質量係数、吸光度など)。一般にαには、散乱などによるエネルギー吸収を伴わない散乱係数(混濁度)と、エネルギー吸収による真吸収係数とが含まれ、αはその和となり全吸収係数とよばれる。このような関係は他の放射線や粒子線に対しても成り立つ。放射線などの場合には原子1個当りの断面積という概念を導入して吸収係数が定義される。
[中島篤之助]