出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
授乳ともいう。子に乳を飲ませて育てることで,哺乳類にのみみられる行動。〈哺〉という字は〈口にふくませる〉という意味で,哺乳の成立には子の吸乳行動が不可欠である。吸乳行動は生得的で,生まれ落ちた子は直ちに自力で乳房に吸いつくことができる。そのために唇および舌はとくによく発達しており,コウモリ類では乳頭に吸いついたままで運ばれるほど吸いつく力は強い。ただし,最も原始的な哺乳類である単孔類では唇はなく,親にも乳頭がないが,育児囊中で乳区からしみ出た乳を舌でなめる。またクジラ類の唇も動かすことができず,子は乳房をつついて出た乳を飲む。
哺乳には,まず泌乳すなわち乳腺から乳が出ることが前提だが,これの開始にはプロラクチン,副腎皮質刺激ホルモン,成長ホルモン,持続にはそのほかにオキシトシンといったホルモンが必要である。親の側の授乳行動は,ヒトを除けば,とくに手を貸すという要素はなく,子が吸乳できるようじっとしていることにつきる。一般に,食肉類など晩成性の動物では,子がすぐに立ち上がれないこともあって,横に寝て授乳するのに対し,有蹄類など早成性の動物は立ったまま授乳することが多い。
執筆者:森 三男
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