日本大百科全書(ニッポニカ) 「四つの四重奏」の意味・わかりやすい解説
四つの四重奏
よっつのしじゅうそう
Four Quartets
イギリスの詩人T・S・エリオットの長編詩。1943年刊。『バーント・ノートン』(1936)、『イースト・コーカー』(1940)、『ドライ・サルベージズ』(1941)、『リトル・ギディング』(1942)の総称。1、2、4部の題はイギリスの古い屋敷や村の名前、3部はアメリカのマサチューセッツ州沖の岩礁群の名称で、エリオットの過去の生活や、歴史的な由来についての連想を伴う。詩人はこれらの情景描写をきっかけに、人間の意識のあり方を探り、啓示の瞬間をとらえようとする。時間と永遠についての深い省察が全編を貫き、現実と幻想が入り混じり、第二次世界大戦中の緊迫した雰囲気も加わる。エリオットの詩的総決算ともいうべき代表作の一つ。
[高松雄一]
『二宮尊道訳著『四つの四重奏』(1966・南雲堂)』▽『森山泰夫注解『四つの四重奏曲』(1980・大修館書店)』