明確な定義はないが、慣用的にはおもに建設工学的な立場から構造物を支持する地殻表層部の地層をいう。地質学的には、その地盤のできた年代別に古生層、中生層、第三紀層、洪積層、沖積層などに分類される。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
地盤は土または岩石から構成される。一般の概念からいえば、軟らかく粒子の結合の弱いものを土といい、硬く鉱物粒子が固結されているものを岩石という。岩盤は、火成岩、変成岩および地質年代で第三紀層以前に属する堆積(たいせき)岩の硬い岩層よりなる地盤と、固結度がやや低い軟岩層よりなる地盤とに大別される。構造物基礎地盤としては一般に問題が少なく、ダム、長大橋の橋脚、原子炉圧力容器といった大型構造物の基礎は岩盤につけるのを原則としている。工学的には、地耐力よりも地すべりや断層などや、切取り斜面の安定やトンネル掘削の難易などが問題となる。土層は、洪積層の固結度の低いほとんどの部分と、沖積層および岩層の風化土から構成され、通常地表面下数十メートルまでの深さの浅い部分に存在する。一般の土木建造物、建築物の大半が立地している地盤である。掘削したり構造物の重量が加わると多少とも沈下、変化あるいは破壊を生じ、地下水を汲(く)み上げると地盤沈下を生じるなど工学上問題が多い地盤である。土質工学的には、土の粒度組成により粘性土地盤、砂質土地盤、および砂礫(されき)地盤に大別される。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
沖積層は1万年前以降に主として水成堆積によって形成された地層で、河川または海流により土砂が堆積したり、植物性の腐朽土が集積したもので、平野のほとんど大部分を構成している。これらの沖積地盤は新しい時代の生成によるものであるため、一般に自重による圧力以外の荷重を受けた経歴がないので強度が小さく、圧縮性も大きい。通常、大型構造物の支持層としては不適で、沖積層の下の洪積層や第三紀層などの堅硬な基盤に基礎を根入れし支持させるのが普通である。とくに軟弱な粘性土地盤では、構造物の不同沈下、ネガティブフリクションnegative friction(負の摩擦)による基礎杭(くい)の障害、広範囲な地盤沈下などを生じることがあり、構造物の設計・施工上特段の配慮が必要である。また、緩い砂地盤では地震時に液状化現象を生じ、支持力が著しく低下して建造物に被害を与えることがある。沖積層のうち、海浜砂州や大河川の下流内湾に臨む三角州などの表層部に堆積した砂層にこの種のものが多い。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
洪積層は地質学的には200万年前以降の地層で、段丘、台地、丘陵地および沖積層下に分布している。海成層、河成層および火山性堆積土層があり、砂礫、シルト、粘土、火山灰土などよりなる。洪積地盤は沖積地盤よりその生成時期が古いため、一般に沖積土に比し固結度が高い。すなわち砂層は締まっており、粘土層は固結し、かつ多くの場合先行荷重を受けており、載荷重による圧密沈下量は小さい。洪積層は沖積層に比べて基礎地盤としては一般に良好である。なお、火山灰土は風化や破壊を受けていない自然地盤ではかなりの強度を有するが、こね返すと強度が著しく低下し土工材料としては好ましくない性質をもっている。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
地盤調査では、地質構成、各地層の工学的性質(剪断(せんだん)特性、変形特性など)、地下水の性状などを明らかにして構造物の設計・施工に必要な資料を得る。調査の方法には、現地踏査による観察、物理探査、ボーリング調査、標準貫入試験、平板載荷試験、および標本抽出した試料を用いた各種の室内試験などがある。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
字通「地」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
土で占められている地殻表層部,すなわち地表から岩石の表層部までの部分を指すこともあるが,一般には各種構造物の基礎として重要な働きをしている,地表面からある深さまでの土層部分をいう場合が多い。
執筆者:木村 孟
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…土壌は一般に土ともいわれ,岩石の風化産物である微細な破砕物質と植物遺体に生物作用が働いて生じたものである。岩石の風化産物そのものは微細物質の凝集体であって,水分や空気は固体の中に閉じこめられ,その構造の中には植物の根が容易に侵入できない。この無機物質に植物遺体などの有機物が添加され,土壌動物や微生物が作用すると団粒構造が生成される。この構造中では土壌粒子のすきまに水分や空気が自由に出入りし,植物の根も容易に伸長して水分・養分を吸収することができる。…
※「地盤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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