増命(読み)ぞうみょう

朝日日本歴史人物事典 「増命」の解説

増命

没年:延長5.11.11(927.12.7)
生年:承和10(843)
平安時代の天台宗の僧。左大史桑内安峰の子。斉衡2(855)年,13歳で比叡山に登り,西塔院の延最に師事し,翌年選ばれて度僧となる。天安2(858)年,東大寺で具足戒を受ける。貞観9(867)年,比叡山で菩薩戒を受け,円仁から天台教学を,円珍から密教を学んだ。昌泰2(899)年に園城寺長吏,延喜6(906)年に天台座主(第10世)となる。同16年に律師を経ずに少僧都,翌年に大僧都,延長1(923)年に僧正となる。たびたび,天皇,皇族,貴族の病気平癒祈願を行って霊験を示し,これにより重く用いられたといえよう。宇多法皇に入壇灌頂と菩薩戒を授け,蘇悉地法や五瓶灌頂の秘法も授けている。入滅時,西方を拝して阿弥陀仏を念じ,往生したという。静観諡号される。著作に『宗論御八溝』1巻,『胎蔵界口伝』1巻などがある。円珍が智証大師と賜諡されたのは,増命の請による。

(三橋正)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「増命」の解説

増命 ぞうみょう

843-927 平安時代前期-中期の僧。
承和(じょうわ)10年生まれ。比叡(ひえい)山にのぼり,延最につき出家。円仁,円珍にまなぶ。昌泰(しょうたい)2年園城寺(おんじょうじ)長吏,延喜(えんぎ)6年天台座主(ざす)となり,のち僧正。祈祷(きとう)の功により宇多上皇に信頼された。延長5年11月11日死去。85歳。俗姓は桑内(くわのうち)。号は千光院。諡号(しごう)は静観(じょうかん)。著作に「宗論御八講」「胎蔵界口伝」など。

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