[1] 〘名〙
※十七箇条憲法(604)「十七曰。大事不レ可二独断一、必与レ衆宜レ論」
※
雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉上二「何時にても国家の大事を担当するに足るべき準備を整頓するにあり」 〔易経‐遯卦〕
② 仏語。修行して悟りを開くこと。出家すること。
※正法眼蔵随聞記(1235‐38)三「是れ程の心不
レ発して仏道と云ふ程の
一念に、
生死の
輪廻をきる大事をば、如何が成ぜん」
※
徒然草(1331頃)五九「大事を思ひ立たん人は、去りがたく、心にかからん事の
本意を遂げずして、さながら捨つべきなり」
※醍醐寺新要録(1620)「報物集云〈略〉故僧正御房大事御書一向西南院伝候
。答、不
レ然。故覚洞院相伝大事等一切不動。遍智院経蔵大法つし有地」
④
技芸などの真髄や、それにかかわる大切な事柄。芸道における
秘伝、秘事など。
※仮名草子・竹斎(1621‐23)上「さて
囃子の大事には、関寺小町乱拍子、
猩々の乱れなり」
⑤ (形動) 普通の状態ではなく、困ったりてこずったりする物事。また、そういうさま。
(イ) 困難なこと。手ごわいこと。
※
今昔(1120頃か)二八「但し其は楽人など呼び下すは、大事なれば否
(え)呼び不給じ」
※謡曲・葵上(1435頃)「たとひ大事の
悪霊なりとも、
行者の法力尽くべきかと」
(ロ) 危険なこと。生死にかかわる一大事。
※名語記(1275)二「みな大事にもなくて、一方のたすかるすぢあるを かたやすとはいへるにや」
※浄瑠璃・近江源氏先陣館(1769)六「もしも運つき頼家公御大事とならんとき、これ、この龍頭の兜を着し、君に代って討死せん」
(ハ) 命にかかわるほど、病気や傷が重いこと。
危篤。
重傷。
※
落窪(10C後)三「いと大事にはあらねど、起き臥しなやみ給ふを」
(ニ) 不都合なこと。いけないこと。さしさわり。→
だいじない。
※虎明本狂言・文荷(室町末‐近世初)「いやしからるるとも、
両人がしかられう程に、大事じゃ、何とぞたくましめ」
※
歌舞伎・傾情吾嬬鑑(1788)
序幕「お武家方の前へ袴も着ずに、こんな形で出るもをかしいものだ。大事
(ダイジ)あるまいか」
[2] 〘形動〙
① かけがえのないものとして大切にするさま。また、かけがえのないさま。
※
大鏡(12C前)二「やむごとなき
親王の大事にし給ふことなれば」
② 評価して心にとめるべきさま。重要で根本にかかわるさま。「大事な点」「大事な
問題」など。
※中華若木詩抄(1520頃)上「大事の異見を申すべきほどに、左右の人をしりぞけられよ」