能の曲目。五番目物。五流現行曲。典拠は『十訓抄(じっきんしょう)』。比叡山(ひえいざん)の僧(ワキ)に命を助けられた天狗(てんぐ)が、山伏(前シテ)姿で訪れ、報恩のために望みをかなえようという。僧は釈迦(しゃか)の霊鷲山(りょうじゅせん)での説法のさまを拝みたいと願う。山伏は架空の幻影ゆえ信心をおこしてはならぬと念を押して消える。木葉(このは)天狗たち(間(あい)狂言)が何の仏に化けようかと相談する場面ののち、天狗(後シテ)が釈迦の装いで現れ、説法の場を再現してみせる。僧が思わず礼拝すると、不遜(ふそん)の魔術を怒った帝釈天(たいしゃくてん)(ツレ)が現れ、天狗をさんざんに痛めつける。天狗の面の大癋見(おおべしみ)と釈迦の面を重ねて掛ける演出もあり、早替りで天狗の装束になるなど、異色の能である。
[増田正造]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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