大伴池主(読み)おおとものいけぬし

改訂新版 世界大百科事典 「大伴池主」の意味・わかりやすい解説

大伴池主 (おおとものいけぬし)

奈良時代歌人生没年不詳。746年(天平18)ころ越中掾(じよう)として大伴家持配下にあり,家持との間に交わした多くの贈答歌を《万葉集》にとどめるが,大伴一族とあるのみで系譜は不明。のち越前掾に転じ,さらに中央官として都にかえった。757年(天平宝字1)橘奈良麻呂の変に加わって投獄され,その後は不明。〈山峡やまがい)に咲ける桜をただひと目君に見せてば何をか思はむ〉(《万葉集》巻十七)。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

朝日日本歴史人物事典 「大伴池主」の解説

大伴池主

生年:生没年不詳
奈良時代の官人。大伴家持と親接な同族で『万葉集』に多く歌を残す。天平10(738)年春宮坊少属従七位下。同年橘奈良麻呂の宴に参加した。18年から翌年にかけて越中守家持と共に掾として越中(富山県)にあり,宴などで共に歌を詠んだほか,家持が病臥したときに歌を贈答している。20年越前掾に転じても天平勝宝3(751)年にかけて越中の家持との間で交信している。5年には左京少進として京にあり,少納言家持らと高円野(奈良市)に遊んだ。6年1月大伴の氏人が家持宅に賀集し宴飲したときにも詠歌している。8年には式部少丞とみえるが,橘奈良麻呂の変(757)に加わり,禁獄され,消息を失う。

(佐藤信)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「大伴池主」の解説

大伴池主 おおともの-いけぬし

?-? 奈良時代の官吏
大伴家持(やかもち)が越中守のときの越中掾(じょう)で,家持とかわした歌などが「万葉集」におおくみられる。のちに式部少丞(しょうじょう)。天平勝宝(てんぴょうしょうほう)9年(757)橘奈良麻呂(たちばなの-ならまろ)の変にくわわり,投獄された。
格言など】十月(かむなづき)時雨(しぐれ)に逢へる黄葉(もみちば)の吹かば散りなむ風のまにまに(「万葉集」)

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

今日のキーワード

自動車税・軽自動車税

自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...

自動車税・軽自動車税の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android