デジタル大辞泉
「時雨」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
しぐれ【時雨】
[1] 〘名〙
① (━する) 主として晩秋から初冬にかけての、降ったりやんだりする小雨。また、そのような曇りがちの
空模様をもいう。しぐれの雨。《季・冬》
※
万葉(8C後)一〇・二二一四「夕されば雁
(かり)の越えゆく龍田山四具礼
(シグレ)に競
(きほ)ひ色付きにけり」
※
蜻蛉(974頃)上「いでんとするに、しぐれといふばかりにもあらず、あやにくにあるに」
② (━する) 涙ぐむこと。落涙すること。
※栄花(1028‐92頃)岩蔭「中宮の御袖のしぐれもながめがちにて過ぐさせ給ふ」
※俗曲・
桑名の殿さん(明治末頃)「桑名の殿さん、時雨
(シグレ)でお茶漬、よーいとな」
[2]
[一] 本阿彌光悦作の楽焼茶碗の名。
[二] 小督局(こごうのつぼね)が用いたという琴の名。
[語誌](一)①は、
季語としては現在では冬に属するが、「万葉集」では晩秋にも初冬にも詠まれ、季節は一定していなかった。「
古今集」でも、秋部に三首、冬部に一首あり、このように
二季にわたって詠まれる
傾向は、「
金葉集」の時代あたりまで続く。
しぐ・れる【時雨】
〘自ラ下一〙 しぐ・る 〘自ラ下二〙
① 時雨が降る。また、晩秋から初冬にかけての、時々雨が降ったり、いまにも降りそうであったりする空模様にいう。
※
古今(905‐914)恋五・八二〇「しぐれつつもみづるよりもことのはの心の秋にあふぞわびしき〈よみ人しらず〉」
※
御湯殿上日記‐長享元年(1487)一〇月二二日「あしたのほと時雨る」
※宇津保(970‐999頃)国譲下「君によりしぐるる袖のふかき色を折れるもみぢと
里人やみむ」
じ‐う【時雨】
〘名〙
① ほどよい時に降る雨。時を得て降る雨。
※続日本紀‐慶雲元年(704)七月壬辰「以
二時雨不
一レ降、遣
三レ使祈
二雨於諸社
一」 〔
礼記‐孔子間居〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
時雨
しぐれ
晩秋から初冬にかけて降る雨で、降ったりやんだりするにわか雨をいう。『和名抄(わみょうしょう)』では、「雨」を「之久礼」と訓(よ)んでいる。『万葉集』には40例近くみえ、巻8や巻10では秋雑歌(ぞうか)に位置づけされており、「九月(ながつき)のしぐれの雨に濡(ぬ)れ通り春日(かすが)の山は色づきにけり」(巻10)など、秋に重点を置きながら、紅葉(万葉では黄葉)を染めたり散らしたりするものと考えられていた。「時雨」という用字はまだなく、平安時代に入ってからのものらしい。『古今集』の用例は12例、季節意識としては『万葉集』と同様だが、「我が袖(そで)にまだき時雨の降りぬるは君が心にあきや来(き)ぬらむ」(恋5)のように涙の比喩(ひゆ)として詠まれたりするようになり、物語や日記などにもわびしさや悲しみを暗示する景物として用いられている。平安中期になると季節意識に変化があり、『後撰集(ごせんしゅう)』の「神無月(かみなづき)降りみ降らずみ定めなき時雨ぞ冬のはじめなりける」(冬)などにみられるように冬の景物として固定し、時雨の多い京都の風土とも相まって王朝文学に頻出し、以後も継承された。俳諧(はいかい)の季題も冬。
[小町谷照彦]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
普及版 字通
「時雨」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
しぐれ【時雨】
沖縄の泡盛。酒名は、さっと通り過ぎる時雨のように飲み心地が爽やかな酒になるようにという願いを込めて命名。「古風味豊かな」味わいの一般酒。原料はタイ米、黒麹。アルコール度数25%、30%、43%。蔵元の「識名酒造」は大正7年(1918)創業。戦禍を免れた150年ものの沖縄最古の古酒を所有する蔵としても有名。所在地は那覇市首里赤田町。
出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報
時雨
晩秋から初冬にかけて晴れや曇りを繰り返す空模様の時、降ってはすぐ止むような雨。通り雨。京都の北山しぐれが有名。
出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報