出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
ロシアの詩人プーシキンの完成された唯一の中編歴史小説。1836年発表。プーシキンは18世紀に起こったプガチョフの反乱(1773~75)に深い関心を抱いて熱心に研究したが、その研究の文学的成果がこの作品である。プガチョフ事件を背景に、要塞(ようさい)司令官ミロノフ大尉の娘マリヤ、士官グリニョフとシバーブリン、そして当のプガチョフらをめぐるさまざまの事件がグリニョフの手記の形で描かれる。イギリスの作家W・スコット流の歴史小説と近代的な家庭小説とがみごとに融合している。文体は簡潔かつ正確で、プーシキンの散文作品の代表作の名に恥じない。また、プガチョフを極悪人としてでなく、きわめて人間的な、多分に同情に値する人間として描いたことも特筆される。
[木村彰一]
『『大尉の娘』(中村白葉訳・新潮文庫/神西清訳・岩波文庫)』
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