大河内一男(読み)おおこうちかずお

精選版 日本国語大辞典 「大河内一男」の意味・読み・例文・類語

おおこうち‐かずお【大河内一男】

経済学者。東京の生まれ。東大教授、東大総長。経済学を基盤に、社会政策理論家として活躍し、労働運動研究にも成果を挙げた。著書に「社会政策の基本問題」「戦後日本の労働運動」など。明治三八~昭和五九年(一九〇五‐八四

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デジタル大辞泉 「大河内一男」の意味・読み・例文・類語

おおこうち‐かずお〔おほかふちかずを〕【大河内一男】

[1905~1984]経済学者。東京の生まれ。河合栄治郎社会政策学を学び、社会政策を科学領域まで高めた。昭和38年(1963)から東大総長。同43年、大学紛争責任をとって辞任。「太った豚よりやせたソクラテスになれ」などの名言を残した。著「独逸社会政策思想史」「社会政策の経済理論」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大河内一男」の意味・わかりやすい解説

大河内一男
おおこうちかずお
(1905―1984)

経済学者。明治38年1月29日東京・下谷(したや)に生まれる。第三高等学校を経て1929年(昭和4)東京帝国大学経済学部卒業。卒業と同時に同大学の助手となり、1945年教授、1963年総長に就任したが、1968年に大学紛争のため辞任、退官。『独逸(ドイツ)社会政策思想史』(1936)、『社会政策の基本問題』(1940)、『社会政策』総論各論(1949、50)などによって、社会政策の生産力理論を展開し、分配政策論や政治論を批判した。経済学説史の分野でも『スミスとリスト』(1943)によって優れた業績を残した。また、第二次世界大戦前の日本の賃労働者の性格を「出稼ぎ型」とする見解でも知られる。戦後は日本の労働問題の実態調査を精力的に指導し、『戦後労働組合の実態』(1950)で日本の労働組合を「企業別組合」と規定した。また『黎明(れいめい)期の日本労働運動』(1952)、『暗い谷間の労働運動』(1970)、『戦後日本の労働運動』(1955)の三部作によって、「出稼ぎ型労働力」論に基づく独自の労働史観を樹立した。『日本労働運動史料』全11巻(1959~1975)の編纂(へんさん)にも取り組む。なお、社会保障制度審議会会長、社会経済国民会議(現、日本生産性本部)議長なども務めた。日本学士院会員。自伝的作品として『社会政策四十年』(1970)がある。

[神代和俊]

『『大河内一男集』全8巻(1980~1981・労働旬報社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大河内一男」の意味・わかりやすい解説

大河内一男
おおこうちかずお

[生]1905.1.29. 東京
[没]1984.8.9. 東京
経済学者。東京大学経済学部卒業 (1929) 後,河合栄治郎門下で助手をつとめる。 1939年母校の助教授となり,45年教授,63年学長に就任。 65年日本学士院会員。 68年大学紛争のため任期途中で学長を辞任,退官。社会政策,労働問題についての研究が多く,論文『労働保護立法の理論に就いて』 (33) で,のちに大河内理論と呼ばれる社会政策理論の骨子を確立,生産政策としての社会政策論を提唱。その立場から『独逸社会政策思想史』 (36) ,『社会政策の基本問題』 (40) などを著わし,経済学史面では『スミスとリスト』 (43) がある。第2次世界大戦後は日本の労働問題の実態調査を中心に,55年以降フォード財団の援助で『日本労働運動史料』 (11巻,未完) の編纂に従事,また 73年社会保障制度審議会会長などの政府関係の仕事もつとめる。上記のほか『黎明期の日本労働運動』 (52) ,『戦後日本の労働運動』 (55) ,『暗い谷間の労働運動』『社会政策四十年』 (70) などがある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「大河内一男」の解説

大河内一男 おおこうち-かずお

1905-1984 昭和時代の経済学者。
明治38年1月29日生まれ。河合栄治郎の門下で,社会政策をまなぶ。昭和20年母校東京帝大の教授,38年学長。43年東大紛争により学長を辞任。社会保障制度審議会会長をつとめた。学士院会員。昭和59年8月9日死去。79歳。東京出身。著作に「独逸(ドイツ)社会政策思想史」「社会政策の経済理論」など。

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