女性ホルモン(読み)ジョセイホルモン(英語表記)female sex hormone

デジタル大辞泉 「女性ホルモン」の意味・読み・例文・類語

じょせい‐ホルモン〔ヂヨセイ‐〕【女性ホルモン】

雌性しせいホルモン

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「女性ホルモン」の意味・読み・例文・類語

じょせい‐ホルモンヂョセイ‥【女性ホルモン】

  1. 〘 名詞 〙 ( ホルモンは[ドイツ語] Hormon ) 性ホルモン一つ発情(卵胞)ホルモンと黄体ホルモンがあり、主成分は前者がエストラジオール、後者がプロゲステロン。前者は女性の発情をうながし、女性性器を発育させてその機能を営ませる。後者は妊娠の維持に必要。雌性ホルモン

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「女性ホルモン」の意味・わかりやすい解説

女性ホルモン (じょせいホルモン)
female sex hormone

女性における性ホルモンで,広く動物をも含めて一般的にいう場合には雌性ホルモンという。女性ホルモンにはエストロゲン卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類がある。女性特有のものである精子の受入れ,着床,妊娠の維持や分娩,授乳などを支配しているのは女性ホルモンであるが,また,このホルモンは女性の二次性徴の発達や維持のために重要な役割をはたしている。そのために,その不足,欠乏は諸種の機能障害や疾患をひき起こすので,これらの異常時の欠乏の補償や治療に女性ホルモンが用いられる。ただし近年,より強力な合成ホルモン剤が開発され,エストロゲン(エストロン,エストラジオール-17β,エストリオールなど),プロゲステロンともに天然のホルモンの臨床利用は少なくなった。

 2種の女性ホルモンはいずれも卵巣でコレステロールからつくられるが,胎盤,副腎皮質のほか微量ながら男性の睾丸でもつくられる。これらの生成は,脳下垂体性腺刺激ホルモンゴナドトロピンのこと。卵胞刺激ホルモンFSHと黄体形成ホルモンLHがある)によって支配される。エストロゲンの分泌は,その血中の濃度からみると,月経発来時は低く,その後漸次増加して排卵(月経周期の14日ころ)直前に最大となり,20日ころに再び第2のピークを示し,一方プロゲステロンは排卵後黄体がつくられることによって分泌が始まり,周期の22日ころに最大の分泌を示す。エストロゲンの分泌に伴い子宮粘膜は増殖する(増殖期)が,排卵後黄体が形成されると分泌期に入る。

 エストロゲンは,女子が思春期に達したときに起きるいろいろな変化に重要な影響を及ぼし,〈女性らしさ〉の形成に関与する。すなわち,腟や子宮の成長を促し,乳腺の発育や間質への脂肪の沈着,乳頭・乳房や陰部の皮膚への局部的な色素の沈着,腋毛や恥毛の成長をもたらすとともに,心理的・情緒的な変化をひき起こす。プロゲステロンは,黄体期に分泌されると,先行したエストロゲンによって増殖した子宮内膜や子宮頸管腺から豊富な粘稠度の高い水様分泌物を生成させる変化をもたらすが,乳腺にも作用し,腺管の増殖をひき起こす。妊娠末期に乳腺の血管網は著しく増殖するが,分娩後の腺管破裂による乳汁分泌は,両種ホルモンの作用下にのみ発現する。プロゲステロンには発熱作用があり,正常月経周期中の体温を毎日測定すると,周期の中ごろに約0.6℃の上昇をみるが,これは排卵と相関性がある。体外からプロゲステロンを投与すると,子宮内膜の間質の脱落膜の変化が妊娠初期像と似てきて,投与を続けると次の月経が発来しない。経口避妊薬ピル)はこの原理をもとにつくられたものである。
エストロゲン →プロゲステロン
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「女性ホルモン」の解説

女性ホルモン

基準値

 エストロゲン(尿検査)

 男性:2~20μg/日

 女性:卵胞期 3~20μg/日

    排卵期 10~60μg/日

    黄体期 8~50μg/日

    閉経期 10μg/日以下

 プロゲステロン(血液検査)

 男性:0.4ng/mℓ以下

 女性:卵胞期  0.1~1.5ng/mℓ

    黄体期  2.5~28.0ng/mℓ

    黄体中期 5.7~28.0ng/mℓ

    閉経期  0.2ng/mℓ以下

卵巣や黄体、胎盤の機能などをチェック

 エストロゲン、プロゲステロンともに卵巣から分泌される女性ホルモンです。

 エストロゲンは、女性の第二次性徴の発現、生殖機能維持や卵胞の成熟、排卵促進、子宮内膜の増殖などの性周期の前半を維持する役割を果たしています。

 一方、プロゲステロンは、卵胞発育の抑制などの性周期後半の維持、子宮内膜の肥厚、妊娠持続作用などの役割を果たしています。

 これらのホルモンは、卵巣や黄体、胎盤の機能を調べるときに検査します。

検査値からの対策

 エストロゲンやプロゲステロンの値は、性差・個人差・年齢別変動・月経周期変動が極めて大きいため、これらを考慮して解釈しています。

 すなわち、1回の測定で診断を行うのでなく、日をかえて何回か測定し、その測定値を総合的に判定します。

疑われるおもな病気などは

◆エストロゲン

  高値→エストロゲン産生腫瘍、先天性副腎酵素欠損症

  低値→卵巣機能不全、黄体機能不全

◆プロゲステロン

  高値→排卵誘発剤使用

  低値→卵巣機能不全、黄体機能不全

医師が使う一般用語
「エストロゲン」「プロゲステロン」

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

百科事典マイペディア 「女性ホルモン」の意味・わかりやすい解説

女性ホルモン【じょせいホルモン】

女性の一次並びに二次性徴を支配する性ホルモン。動物をも含める場合には雌性ホルモンという。脳下垂体前葉の生殖腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンによって支配され,卵巣から分泌される。卵胞からはエストロゲン(卵胞ホルモン,発情ホルモン),黄体からはプロゲステロン(黄体ホルモン)が交互に分泌され,女性性器官の性周期の正常な運行に関与している(月経)。また,この二つの作用をもつ多くの合成ホルモンがあり,臨床的にも用いられている。
→関連項目性ホルモン前立腺癌ターナー症候群ホルモン補充療法

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

化学辞典 第2版 「女性ホルモン」の解説

女性ホルモン
ジョセイホルモン
female sex hormone

女性および雌性動物の生殖器官の機能調節,発育維持,第二次性徴の発現をつかさどるホルモン発情ホルモン(エストロゲン,卵胞ホルモン,濾胞ホルモンともいう)と黄体ホルモン(ゲスタゲン)に大別される.発情ホルモンは,卵巣濾胞,胎盤などから分泌され,黄体ホルモンと協力して性周期を起こさせる.黄体ホルモンは卵巣黄体および胎盤から分泌され,発情ホルモンと協力して性周期を起こし,妊娠を持続させる作用をもっている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「女性ホルモン」の意味・わかりやすい解説

女性ホルモン
じょせいホルモン
female hormone

女性の卵巣から分泌される2種のホルモン,卵胞ホルモン (エストロゲン) と黄体ホルモン (プロジェステロン) のこと。前者は卵胞でつくられ,雌性動物に発情させ,人間の場合は子宮内膜を増殖させ,頸管粘液量を増し,グリコーゲンを増して精子の頸管侵入を容易にし,2次性徴を発達させる。この卵胞ホルモンはまた下垂体に働いて,卵胞刺激ホルモンを制御し,黄体刺激ホルモンを分泌させ,排卵を促し,これが黄体となって後者の黄体ホルモンを分泌させる。黄体ホルモンは子宮内膜を分泌期に変え,受精卵の着床を助ける働きをもつ。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

毛髪用語集 「女性ホルモン」の解説

女性ホルモン

女性特有の体型や身体のリズムを司るホルモンのこと。卵巣内の卵胞から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と、黄体化ホルモンの刺激により卵巣の黄体から分泌される「プロゲステロン(黄体ホルモン)」がある。毛髪においては、髪を発達させ、毛髪の成長期を持続させる働きがある。

出典 抜け毛・薄毛対策サイト「ふさふさネット」毛髪用語集について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「女性ホルモン」の意味・わかりやすい解説

女性ホルモン
じょせいほるもん

性ホルモン

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

栄養・生化学辞典 「女性ホルモン」の解説

女性ホルモン

 →エストロゲン

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の女性ホルモンの言及

【性】より

…そしてほとんどの男性化作用をとりしきるのは男性ホルモンであるといって過言ではない。これに対し,女性ホルモンは性分化にはほとんど意味をもたず,女性に分化したものを,より強調し,修飾する作用をもつにすぎない。
[性の連続性]
 男性ホルモンは解剖学的な性,生理学的な性,行動科学的な性を強力に方向づけ,規定していく。…

【性ホルモン】より

…発生初期には性腺の分化にも関係する。性ホルモンは雄性ホルモンまたは男性ホルモンと雌性ホルモンまたは女性ホルモンに二大別されるが,いずれもステロイドホルモンである。近年,生体内には存在しないが,性ホルモンと同じ作用をもつ合成物質がいくつも作り出されており,これらを含めた総称として性ホルモン物質sexogenという言葉が用いられる。…

※「女性ホルモン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android