消費を刺激するため、国や地方自治体が消費者に一定額を補助する給付金。不況期や景気低迷期に、家計の負担を軽減し、地域経済を活性化する目的で支給される。広く国民に支給するケースと、低所得者など対象を絞るケースがあるが、いずれも形をかえた減税である。一般に支給事務は市区町村が行う。商品券の形で支給する「地域振興券」や、購入額に一定額を上乗せして買い物できる「プレミアム付き商品券」も全部あるいは一部が公的資金で補助されるため、定額給付金の一種とみなすことができる。定額給付金は一定の消費押し上げ効果を期待できる半面、給付額の一部が貯蓄に回る傾向があり、消費喚起効果は限定的でばらまき政策との批判をよびやすい。
日本政府はリーマン・ショック後の2009年(平成21)、外国人を含む住民基本台帳に記載された全員を対象に定額給付金を支給した(総支給額1兆9367億円)。所得水準に関係なく、1人当り1万2000円を支給し、18歳以下の子供と65歳以上の高齢者には8000円を加算支給した。新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)が流行した2020年(令和2)に、同様に全住民に一律10万円を支給(総支給額12兆8803億円)。このほか消費税率を3%から5%へ引き上げた1999年(平成11)に、15歳以下の子供や低所得高齢者世帯を対象に「地域振興券」(1人2万円、総額6194億円)を支給。2015年の消費増税時(5%→8%)には額面以上の買い物ができる「プレミアム付き商品券」(総額2372億円)を全住民に発行した。2019年の消費増税時(8%→10%)には子育て世帯と住民税非課税世帯に限定して「プレミアム付き商品券」(1人上限2万5000円、上乗せ補助額5000円、予算総額1225億円)を発行した。このほか地方自治体が独自に「プレミアム付き商品券」を発行する例もある。ただ内閣府や総務省の試算では、定額給付金やプレミアム付き商品券などの景気押し上げ効果は総支給額の3~4割にとどまる。
海外では、リーマン・ショック時にタイや台湾などが国民へ直接支給を実施。新型コロナウイルス感染症の流行に対してはアメリカ(年収7.5万ドル以下の場合、成人1人最大1200ドル、子供に500ドル)、香港(ホンコン)(成人1人1万香港ドル)、シンガポール(21歳以上の全国民に600シンガポールドル)、韓国(全世帯を対象に4人以上の世帯で100万ウォン)などが直接支給を実施した。
[矢野 武 2021年5月21日]
(秋津あらた ライター / 2009年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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