寒雷(加藤楸邨の句集)(読み)かんらい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「寒雷(加藤楸邨の句集)」の意味・わかりやすい解説

寒雷(加藤楸邨の句集)
かんらい

加藤楸邨(しゅうそん)の第一句集。1939年(昭和14)3月、交蘭(こうらん)社刊。句数540句(40年2月の改訂増補版には「達谷(たっこく)抄」46句を増補)。書名は巻末3句の「寒雷やびりりびりりと真夜(まよ)の玻璃(はり)」などによる。初めに師水原秋桜子(しゅうおうし)の序がある。本文は「古利根(ふるとね)抄」(1931~34、145句)、「愛林抄」(1935~36、181句)、「都塵(とじん)抄」(1937~38、214句)。楸邨が埼玉県の粕壁(かすかべ)(現春日部市)で句を始めてから東京生活に移った時期で、初期の甘美で叙情的な句風が、しだいに内面に沈潜して深い苦悩をたたえ、人間探求派とよばれるようになる、その推移がよくうかがわれ、昭和10年代の俳句史に一時期を画した重要な句集の一つである。「行き行きて深雪(みゆき)の利根の船に逢ふ」(古利根抄)、「蟻(あり)殺すわれを三人の子に見られぬ」(都塵抄)。

井上宗雄

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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